「テメエ自身が死ぬほど嫌いだと泣くぐらいなら、テメエ自身を変えることに死ぬ気になってみろ」スマグラー おまえの未来を運べ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
テメエ自身が死ぬほど嫌いだと泣くぐらいなら、テメエ自身を変えることに死ぬ気になってみろ
まず個人的な思い入れで0.5〜1.0ほど判定を上乗せしていると明言しておきたい。
この文章がレビューと呼べるような代物で無い事も、勘弁して頂きたい。
そもそも自分は度を越えたネガティブ思考。
自分のやりたい事を「自分には無理だ」と諦めてしまう人間、
何に対しても自分を信用しきれない人間である。
この映画はきっと、そういった類の人間には一撃ノックアウト級の威力を持った映画。
映画は石井克人作品の真骨頂である、虚構とリアルのど真ん中を行く世界観。
そしてシリアスとコミカルのキワキワの境界線を行く強烈なキャラ描写。
安藤政信も満島ひかりも高嶋政宏も良い。
男も惚れる格好良さの永瀬正敏も物凄く良い。
(「俺達の住む世界は、残すものに価値を持てねえ」)
だが、僕にとって誰より印象的だったのは、鬱々とした表情で日々を送る妻夫木聡。
何でもかんでも「自分には無理だ」と逃げ回り、
そうして逃げた自分を蔑む人生。
ひとり真っ暗な部屋で泣く。
自分がまるきり世の中に必要の無い人間に思える。
小さな親切くらいならと思ってしたことも、
「何の役にも立たない」と切り捨てられる。
それだけで少し死んだような心持ちになる。
こんなんで生きてていいのか、俺、と。
ああ、ちょうど良かった。
ちょうど良い頃にこの映画を観られた。
もういい加減そんな惨めな思いはうんざりだと、自分も頭に来ていた所なんだ。
主人公と同じように「クソッタレ!」と叫べばいい。
そうして、自分への怒りを原動力に変えればいい。
「無理だ無駄だ」の思考ループなんざ要るか。
そんなものが有ろうが無かろうが、「やらなきゃならない」という事実は
お前の目の前にニヤけたツラであぐらをかいたまんまだ。
なんでか知らぬが生きてる人生。
ヤケクソでもいい。とやかく考えるな。
全力で、自分の理想の何かを演じて生きてみろ。
本気で嘘を吐けば、いつか真実になれるかも知れない。
自分を変えられるかも知れない。
テメエ自身のことが死ぬほど嫌いだと泣くぐらいなら、
テメエ自身を変えることに死ぬ気になってみろ。
こんな後ろ向きな理由で、
胸を震わせながら本作を観た人間なんて一体どれだけいるのだろうか。
分かっている。少ないに越した事は無い。
だが、少しでも多ければと望んでもいる。
この映画で、少しばかりでも「変われる」と思えた同類がいればと考えてもいる。
<2011/10/22鑑賞>