劇場公開日 2011年4月23日

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「恋は覚めるもの、結婚は現実に生きる事、ピンクの恋は現実に触れるとブルーに変色する!」ブルーバレンタイン Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5恋は覚めるもの、結婚は現実に生きる事、ピンクの恋は現実に触れるとブルーに変色する!

2012年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

「ブルーバレンタイン」正にこの映画は題名が示す通りに、限りなく「ブルー」な日々へと向かって行く一組の夫婦の日常の物語を淡々と描いていく様が切なくて、観ている方の私は只黙って画面を直視しているのも哀しくなってしまう衝撃の作品だった。
ラストは、落ち着かない気持ちになって、やっぱり二人はダメだったか・・・出直せないこの二人の結末には、ハッピーエンドになる事などは決してなりえない話であるのか?と哀しいため息が思わず、漏れてしまうのだった。
この広い世の中で運命を感じる人との出会いとは、始めて出会ったはずであるのにも関わらず、何処かで、過去に出会っていた様な錯覚を憶えてしまう程のディープな感情を持つ事も決して珍しくはない男と女の関係を指しているのだろうか。
その彼らがお互いの未来の生活に情熱を見出し、意気揚々として、幸せの絶頂を体験してしまうと、その後に訪れるのは、やはり下り坂しか有り得ないのだろうか?
運命の出会いを遂げた二人が、晴れて無事に結婚をして、家庭を築いて行くと言う事であっても、結局日常生活を送ると、結婚の誓いの言葉の様に、どちらか一方が先に死ぬまで、添い遂げる事は建前になってしまうのだろうか?其れほど、一緒に一つ屋根の下で暮して行く事は困難なのだろうか?この映画は生きて現実生活を営む事と恋の違いを語ってくれるのだ。
ディーンは、シンディーを大切に思っているし、彼は、一人娘のフランキーをこよなく愛し大切にしているのだ。しかし、ディーンとシンディー二人の間には少しずつ、溝が出来て二人の気持ちが再び重なりあう事は決して無いのだった。
この映画を観ていると、結婚する二人にとって何が一番大切であるのか?と言う事を二人の姿を通して語ってくれるのだ。
ディーンとシンディーの二人は、生きて行く過程に於ける価値観が全く最初から、水と油であった事は明白である。しかし恋は盲目なのだ。二人の価値観の相違は恋する二人の気持ちで乗り越えられると錯覚してしまう所に、落とし穴と言う二人の悲劇があるのだ。
しかし、人間、特に夫婦が永年一緒に連れ添うと基本的な考え方などの人生の価値観も同調して来て、最初はお互いに価値観の相違が有っても、何時しか同じ価値観へと変化し、融合していってしまうのが普通である。全く同じには成れないものでも、ほぼ似て来る事が常である。その似て来た者同志が夫婦とだと思うのだが、でも離婚の理由のトップは、俄然、性格の不一致、生活感の相違と言う点に尽きるのだ。
しかし、時々時間経過と共に二人の中が融合して行く方向で、良い変化が起こる場合と、稀に、時間経過により、余計に二人の違いの部分が肥大化してしまう事が有る。何故この違いが生れるのか?それは夫婦とは、所詮は他人が一緒に生活をしていく事だと割り切って、生きる事無くしては、添い遂げる事など、出来る筈も無いのだと言う覚悟の欠如だと思うのだ。人生の目的などに対する価値観が同じ様なヴィジョンを描く事が出来ていないと、決して結婚生活は成立しないと言うお話なのだ。愛と言うより、出会った時の感動は、日常生活の中で、忘れ去られてゆく。恋は落ちるものと覚悟が必要と言う現実のお話だ。

ryuu topiann