「映画さながらの。」フェア・ゲーム ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
映画さながらの。
事実は小説よりも奇なり…とはよくいったもんだ。
2003年にこんな事件が起こっていたとは全く知らなかった。
9.11の悲劇を発端にアメリカが引き起こしたイラク戦争は、
イラクに大量破壊兵器が確かに存在するという名目で(当時)
認識されていたが、実はそうじゃなかった。その事実を逸早く
手にしていたCIAエージェントの妻とその夫の元・大使の闘い
(しかも自国政府との)を描いた、かなりビックリな作品である。
あのテロから10年が過ぎ、最近こういった当時の暴露映画が
作られるようになったが、それにしてもあの戦争がどれだけの
イラク国民を傷つけたか、テロの犠牲となった自国民の悲劇と
照らし合わせ考えることすらできなかったのだろうかと思える。
ブッシュ政権が守ろうとしたのは(自分以外で)なんだったのか。
ヴァレリー(N・ワッツ)が遂行任務に当たっていたその調査に、
夫のジョセフ(S・ペン)がさらに裏付けをとった。これでもはや
イラクに大量破壊兵器は存在しない。との結論報告を握り潰し、
存在すると世論を戦争へと導いたのが政府だというから呆れる。
政府に反論を唱えた夫に対し、次はその妻がCIAエージェントで
あることを世間に暴露する。一体何を考えてるんだろうと思う。
子供のケンカか!?やられたらやり返すってやつ?
何のための戦争だったのか非難に油を注いだうえ、一国民でも
ある元・大使一家を危険にさらし、更にはCIAで遂行中の案件や、
携わる工作員にも危害が及ぶことに。そもそもCIAエージェントの
身分暴露は、アメリカ合衆国の法律である「情報部員身分保護法」
により禁止されているそうだが…。
すでに起こってしまったテロや戦争は、もうなかったことにできない。
この悲劇を繰り返さないためにも敢えてご本人が登場し(エンドで)
法廷での一部証言を流してくれる(ナオミが彼女にそっくりだった~)
彼女に協力してくれたイラク市民への謝罪も含めての公開だと思う。
主人公二人はもとより、実名?で演じた同僚や関係者なども上手い。
彼らと子供が命の危険に晒されなかっただけでも救いだが、傍らで
多くの人間が犠牲になったことも忘れ難い。こんな失態は、せめて
映画の中だけにしてもらいたい!と恐怖と呆気にとられてしまう作品。
(それにしてもスパイって…映画同様美人なのね!騙すにはそれか^^;)