「見ているあなたこそ、悪魔かもしれない」悪魔を見た septakaさんの映画レビュー(感想・評価)
見ているあなたこそ、悪魔かもしれない
う~ん、精神に来ましたねぇ
ただね、復讐行為に爽快さを
覚える、自分がはっきりといて
悪魔が、誰が誰だかわかんなくなっちゃたよ
客電点灯。
立って振り返ったまましばらく放心。
ハンカチで涙を拭いているおばさまが羨ましく思えました。
だって、わたしは、自分の中にある(かもしれない)
悪魔な心に、慄くというか、戸惑っていましたから。
イ・ビョンホンが、チェ・ミンシクにした行為。
たぶん、わたしも、同じようにしたと思うんです。
同じ目にあえば、1回殺しただけでは、殺し足りませんよ。
だから、イ・ビョンホンの行為が
エスカレートするにつれて、自分の中でも、
テンションが高まっていくのが手にとるようにわかる。
チェ・ミンシクが怯えて逃げる姿を見るのがたまらない
もっと逃げろ、もっと逃げろ、と逃がしたくなってくる
最後の最後、
エンディング前の行為は、
ネタバレになるので、具体的には触れませんが、
わたしが思っていたのとは違っていました。見終わった瞬間は、
「イ・ビョンホンのやさしさ」かと受け取っていたのですが、時間が経ち、
頭の中が整理されてくると、究極の残忍な行為だったのではないかと震えています。
イ・ビョンホンの涙に、
すべてが終わったように見えますが、それは錯覚。
だって、復讐の鎖が、完全に断ち切れたわけではないのですから。。。
◇ ◇
悲劇的性なら『オールド・ボーイ』(03)のほうが上。
グロさ、救いのなさなら『チェイサー』(08)のほうが上です。
映画館での貼紙、WEBでの情報を
斜め読みしても、どちらが悪魔か?
そんな感想が多くを占めています。
広い意味でとらえれば、
イ・ビョンホンだけでなく、
チェ・ミンシクも被害者です。
法的にも、
二人とも、違法行為をしています。
心に内包されているものが、
どのように表に出てきたかの差だけであって、
双方とも悪魔だと思います。そして、わたしのように、
イ・ビョンホンの行為に、ある種の爽快感を覚えた人も、
悪魔だと思います。さすがに、チェ・ミンシクの行為に、
爽快感を覚える人は、危険な気がしないでもありませんが・・・。
◇ ◇
〈 おまえは、どうやったって、俺には勝てない 〉
最後まで肉体的距離は近いのに、
精神的距離は交わらないふたり。
ゲーム(遊び)感覚と
贖罪(神的)感覚の違い。
『眠れる森』(98)、
フジテレビで放送されたドラマも
今作と似たような部分があるのですが、
もう一点、共通しているのは「十字架・キリスト・神」の存在。
悪魔との対比
人は気づかなくても神は見ている
救い、許し、そして裁き
考えれば考えるほど深みにはまってゆきそうです・・・。
◇ ◇
白と黒
白と赤
色を際立たせるため、
コントラストを意識しているような気がしました。
さすがに、明度と彩度を、調整していたのには気づきませんでしたが。
あとは、
トンネルに『殺人の追憶』(03)
雪の使い方に『オールド・ボーイ』(03)
途中に出てくる家族の女性の衣装、メイク、
ヘアースタイルに『渇き』(09)へのオマージュを感じました。