劇場公開日 2011年3月26日

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「ジャック・タチの娘へ」イリュージョニスト kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ジャック・タチの娘へ

2020年5月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 カードマジック、花を出したりウサギを出したりといったシンプルで古臭い手品師タチシェフ。見た感じは老紳士なのだが、いつでも引退OKといった雰囲気で町から町へと公演の旅を続けていた。パリからロンドン、そしてスコットランドへ。そこの宿でメイドをしていた少女アリスが亡き娘のようにも思えたのだが、去り際に赤い靴を魔法のように差し出したことで、本物の魔法使いだと信じ込み彼についてくる。

 大都会では全くウケないのに田舎町では手品も受ける。時代の流れには逆らえない。ビートルズ誕生のちょっと前だから、バンドブームが押し寄せている雰囲気もする。腹話術師や体操3人組なども頑張って生きているのだ。

 フランスのコメディアンであるジャック・タチのオリジナル脚本を見事にアニメ化した作品でもあり、劇場に入るとタチの代表作『ぼくの伯父さん』(1958)が上映されていたりする。老人と少女の関係でいえばチャップリンの『ライムライト』(1952)も思い出されますが、引退間近、死期間近である男にとっては過去の恋人なり、娘なりと思いを馳せるものだろう。ラストの汽車の中でのシーンや飼いウサギを野に放つシーンは哀愁たっぷりだ。

 同監督の『ベルヴィル・ランデブー』でもタチ風の部分があったし、極端なデフォルメの人たち、トリプレットという三つ子老婆が登場したりと、何かと共通点が多い。小作品ながら何度でも見たくなるアニメでした。

kossy
近大さんのコメント
2020年5月19日

『ライムライト』はいつの時代でも通じる物語ですね(^^)

近大