「魔法使いはいない…」イリュージョニスト とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
魔法使いはいない…
とても余韻を残す作品。
安野光雅氏の『旅の絵本』の中で展開されるような、味わい深い物語。
老手品師と、押しかけ女房ならぬ押しかけ娘(アリス)の物語。
喜劇役者&監督タチ氏が娘にあてた脚本をアニメ化したもの。
一説によると、ブレイクする前に産まれた、一緒に暮らせなかった娘をイメージしたとも。
そういう意味では、老手品師も娘にイリュージョン(父娘ごっこ)を見せてもらった。
でも、奇跡は起きない。極めて現実…。
愛があふれればあふれるほど、切ない。
この二人の関係を描きながら、
背景として、機械化とマスメディアの波が押し寄せて、その波にのまれてしまった人々の姿も描く。
一つの仕事をプライドを持って続けるにしても、需要と供給の波は容赦なく、人に変革を迫る。
セリフもほとんどなく、けばけばしい音楽もほとんどなく、しっとりとした味わい深い作品。
でも反面、自分の万能感の果てのような場面も見せられて、心がイタイ。
いつか来る引き際、幕引き、そして次の人生。私はどのように迎えて、どのように旅立つのだろう。
老手品師のように、与えた喜び・豊かさを胸に旅立てるのだろうか?
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