「想い続けた32年」唐山大地震 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
想い続けた32年
1976年に中国で起きた20世紀最大の震災と言われる唐山大地震。
この震災によって離れ離れになった家族の32年を描いた感動作。
日本では2011年3月に公開だったが、東日本大震災が起こり公開中止に。
4年の歳月を経て、晴れて公開。
いつ公開されるかずっと気になっていて、レンタルを待っていた。
4年前の公開中止はやむを得なかったと思う。
冒頭の震災シーンは真に迫り、人が犠牲になる描写も。
今でもストレスに感じる人は多いだろう。
しかし、4年も待たなくてはならなかった事については疑問を感じる。
何故なら、震災を特殊技術を駆使して描いた見世物映画ではなく、家族の絆を描いた人間ドラマなのだから。
震災が全てを狂わせた。
家も仕事も、夫も失った。
そして苦渋の決断。
幼い姉ドンと弟ダーが瓦礫の下敷きになり、助けられるのはどちらか一人だけ。
母ユェンニーは泣く泣く弟を選ぶ。
その声は薄れゆく意識の中で、ドンにも聞こえていた…。
助かったユェンニーとダーは、寄り添うように生きていく。
やがてダーは自立し、家を出、嫁を貰い、事業で成功する。
ユェンニーは一緒に暮らそうと言う息子の誘いを断り、再婚もせず、狭い家で質素に暮らし続ける。
自分を助けてくれた亡き夫への愛と恩、自分が“殺した”娘への罪の意識をずっと背負って。
死んだと思われたドンは奇跡的に助かっていた。
軍人夫婦に引き取られるも、あの時のあの声が心の傷となり、口も利けない。
が、養父母の愛に包まれ、本当の家族のように暮らし、成長する。
養母が亡くなり、医大で出会った恋人の子を妊娠、退学して家を出、未婚の母として女手一つで娘を育てる。
養父の下にも戻り、カナダ人と結婚してバンクーバーへ。
幸せな時も、辛い時もあったそれぞれの32年。
忘れる事のなかった家族への想い。
2008年、再び運命が動き出す。
四川大地震。
ボランティアとして参加していたドンとダーは偶然にも再会を果たす。
そして、母とも…。
見捨てたと苦しみ続ける母と、見捨てられたと複雑な思いの娘、二人の再会は…。
共にどんな思いの32年だったか。
苦しみや複雑な思いだけじゃなかった筈。
家族は永遠に家族。
ベタなシーンもあり、展開が分かっていても、家族の絆に心揺さぶられる。