劇場公開日 2023年8月26日

「あなたは【映画】を今までに何本見ましたか?千本?百本?実は一本も<見ていない>のです・・・」ポエトリー アグネスの詩 蛇足軒瞬平太さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5あなたは【映画】を今までに何本見ましたか?千本?百本?実は一本も<見ていない>のです・・・

2017年4月27日
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♪あたりまえ~あたりまえ~あたりまえ体操♪

劇中のセリフを引用して。
ーー詩を書く事は日常の中で「美しさ」を見つける事ですーー

もひとつ引用
あなたは【映画】を今までに何回見ましたか?千回ですか一万回ですか?。
実は一回も<見ていない>のです・・・・。

<映画を見る>という事はこういうことだ!
といつもながら声高には言わないが、
その緩やかな強制力が圧倒的なイ・チャンドン監督。
『オアシス』では共感や感情移入を一切許さない男女の究極の恋愛を<見る>。
『シークレット・サンシャイン』では神や神の赦しも一切認めない究極の現実を<見る>
そして<感じろ>と。

そして本作はシナリオと芝居と演出とキレイな風景を<見る>だけでは、物語は追えない。
詩というピース(断片)を観客がそれぞれの見解と解釈で嵌め込みながら<見る>事を強制される。
(その嵌め込みも想定内っぽい所が凄すぎ!)
なおかつ主人公の設定も相俟って、意味不明な行動や会話も、
映画→詩→映画と観客自らモードチェンジさせていかないといけない作品、
いわばサグラダファミリア的に観客が構成しながら<見る>。

もちろん主人公の<見る>という行為の進化のさせ方
→死んでしまった少女と主人公のシンクロ(花や性的虐待のプチ追体験、美&醜のシンクロ)
→詩を書けるようになった(書けるようになんてなりたくなかった)少女と主人公
→その意味
→見せる側と見る側のモードのシンクロ・・・。
こんな作劇の構築の方法にただただ平伏させられる。

カンヌ映画祭最優秀脚本賞受賞。
この<見る>という行為を啓蒙しながら、
あり得ない物語の構築方法によって
映画というものの存在形態にチャレンジを仕掛けてくる男イ・チャンドン。

公開から半年が過ぎ、二番館ではあったが映画館はほぼ満席の状態であった・・・・・
満席・・・・
♪あたりまえ体操~ チャン チャン♪

蛇足軒瞬平太