髪結いの亭主のレビュー・感想・評価
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永遠に
美しい「髪結いの女」マチルダと中年男アントワーヌの彩り溢れた愛の生活。「永遠」に続くと思うふたりの生活。
「愛が消える前に。優しさに変わる前に」
「あなたが死んだり、私に飽きたりする前に死ぬわ」
過ぎ行く「時間」と共に薄れる「愛」。
過ぎ行く「時間」と共に老いていく「自分」。
マチルダは、時間の残酷さに耐えられませんでした。愛という刹那と生命という刹那を受け止められませんでした。
「永遠」を信じることができたら、どんなに幸せでしょう。「永遠」を諦めることができたら、どんなに楽でしょう。
「永遠」の意味を分かった時に、私はどんな選択をするのかな。
小さい頃の夢をかなえた男に女が取った至上の愛の形とは・・・
小さい頃に夢見た女性理容師フェチの男が理想の美女をみつけ、ついに夢をかなえるという一見、文章にすると変態の映画だが、民族的な音楽と官能的な画、さらにユーモラスな語り部が絶妙のストーリーを奏でています。アンナ・ガリエナの官能的な美しさには本当にくらくらするほど魅かれてしまいました。ラストシーンは衝撃的でした。決してハッピーエンドに終わらないところがこの究極の愛の描き方なのでしょう。エロスと芸術の境目ぎりぎりのマニアックですが観るに値する良い作品です。
深い映画というのはこういう映画のことを言う
最初見たときはなんだか訳が解からなかった。
次にネット配信されたのを見たらなんだか奇妙なセンスの中に人間の真理が表現されているようでとても興味深く観れた。
しかし結末の意味はやっぱり解からなかった。
そういう雰囲気を楽しむ映画なのか?とも思った。
とあるネット上の質問サイトでこの結末のことを取り上げていた。
それを読んで、もやもやがいっきに解消した。
と同時に、とてつもない悲しい映画なんだということがわかった。
いや~そのときの衝撃ったらなかった^^;
味のある映画というのはこういう映画のことを言うのだなあと思う。
フランス映画が意味が解からないから良いなどとほざいている、にわか映画評論家もどきの知ったかぶり馬鹿には死んでも理解できない世界だろう。
まあそういうやつは直ちに死んでもらっても別にかまわないが。
自分も理解できなかったクチだが、少なくとも理解したフリしてうぬぼれてはいなかった。
このような抽象的な映画から、真の主題を見抜く力というのは、おそらく人間の厚みというか、その人の人生経験の質の問題のような気がする。これを見抜ける人って、やっぱり人間ができてるんだろうなあ。自分も全然及ばない。
こんなことって、現実の日常でも起こってるのかもしれないなあ、と私の短い人生を振り返っても思う。
正直、自分は何度も観ようと思わないが、恋をしたことがある人なら、いちどは観ておいて損はない映画。
究極の愛とは究極のエゴイズム
「髪結いの亭主」とは日本古来からの言い方で、女房に食べさせてもらって、のんびり暮らしている亭主のことを言うそうだ。まさにピッタリの邦題があったものだ。子供の頃から「髪結いの亭主」になることを夢見ていた主人公は、願い通り理想的な髪結いの亭主となる。少年にとっての髪結いは初めて知る官能の対象であり、彼にとってまさに全知全能の愛の女神だ。しかし彼その愛の女神は同時に死を呼ぶ神でもあり、少年時代に憧れた髪結いは、非業の死をとげ、本当に愛した髪結いもまた同じ運命をたどることになる。
ル・コント監督の放つ究極の愛の物語は、果たして本当に愛の物語なのか?私はここにそれぞれのエゴイズムを見てしまうのだが、究極の愛とは究極のエゴイズムなのかもしれない。
「髪結いの亭主」になることだけを夢見てきた主人公を演じるロシュフォールは、普段の紳士的な役柄とは大きく違がった、飄々としたキャラクターを、独特の存在感で演じ特筆に値する。そして彼の愛を一心に受ける髪結いを演じるガリエナは、知性と官能と哀しみを兼ね備えた、“謎めいた女”を堂々と演じ、忘れがたい印象を残す。この2人の静かで穏やかな官能の日々は、美しい映像と相まって、どこかおとぎ話のような非現実感を漂わせ、観る者に来る悲劇を予感させずにはおかない。初めて店に来た客からの唐突すぎる求婚を受け入れたヒロインの心も過去も謎のまま、亭主にも我々にもその美貌を永遠のものとしてしまった。彼女にとっての永遠の愛が死であったのは何故なのか?愛の為に死ぬと書き置きした女房の死を受け入れられない亭主の哀しみは絶望を通り越して滑稽となり、哀しみを誘う。
モザイクの床、壁の鏡、この小さな店は、夫婦にとって愛と官能の全世界だ。髪結いのいなくなったこの店は、もはや愛のない虚構。
少年時代からの夢を追い求めるというエゴイズムを縦糸に、幸福の絶頂で死んで行くエゴイズムを横糸に織られた究極の愛の物語は、美しくも悲しく、残酷でありつつ滑稽な官能の物語でもある。
今まで観た中で一番の衝撃なラスト!
日本にパトリス・ルコントの作品で一番最初に紹介されたのが、本作。
時系列で幸せをとらえる男と、その瞬間瞬間で幸せを捉える女の性。個人差はあるだろうが、これけっこう男と女のリアリティだと思います。これを観た当時の青二才だったわたくしには、このエンディングはあまりにもショッキングです。ある意味ホラーです。
そらからルコント作品は観まくりましたが、この作品を作っていた時期って、彼病んでただな~とつくづく思います。自らのカタルシスのために徹底的にシビアな映画つくりを続けた彼ですが、そこにはきっちり娯楽性を持たしている。今の世界の監督の中で、彼ほど深いのにしっかり娯楽している映画を創りつづける人はいないと思います。
ハリウッドを一回離れたい人におすすめ。
こんな素晴らしい作り手がいるのです。
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