「愚かでない女。」軽蔑 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
愚かでない女。
中上健次の遺作を映画化。
またも私は読んでないのだが、原作の雰囲気はどうだったんだろう。
こんな綺麗な作風にしないで、もっと泥臭くて男女が匂い立つような、
昭和の青春物語なら良かったのになぁと思った。もちろん日活でね。
軸となる話は古臭いのに、それをわざわざスタイリッシュにしている。
せっかく今をときめく若手俳優を使うのだから!!は分かるんだけど、
彼らにその風情を求めても空回り、せっかくの熱演が勿体ない気がする。
鈴木杏が新宿でナンバーワンのポールダンサーって?^^;え~マジで。
彼女はどんなに頑張ってもそういうキャラじゃない。脱いでもHしても
彼女が繰り出す演技の巧さは、真知子という女のずっと上をいってる。
つまり…愚かな女には見えないのだ…。頭が良くても失敗はするけど、
自身の生活を捨ててまでカズについてゆく壊れた女には見えないのだ。
高良健吾。彼もかなり巧い演技を見せるのだが、やっぱり若いので^^;
小林薫や大森南朋あたりが出てきた時点で影がどんどん薄れてしまう。
いい加減で甘ったれのボンボン息子というよりは、ただのお調子バカ、
さらに押しが弱く、受けだけ面のいいちゃらんぽらん、この男のどこが
そんなに良いのか私にも分からない^^;真知ちゃん、なんでやねん??
まぁ…それを言ったらダメですかね、青春モノが成り立ちませんね^^;
なんかこう~それを補う?んだか、誤魔化す?んだかで、変な音楽が
劇中でしょっちゅうかかるんだけど、アレ、かなり私には邪魔でした。
あんな音楽(ゴメンね作者さん)ない方がいい。なんだか耳障りだった。
おかしな楽曲で映画が散々といえば(汗)最近の角川映画の特権項目?
なんで二人の演技を潰すような音楽が必要になるのか、全く分からない。
彼らの演技に集中したいのに、その音楽に邪魔されてしまった理不尽。
映画の完成度は、どの時点で決まるんだろう。
もともとがこんな青春地獄放浪記みたいなお話なので、もの凄い感動や
胸に迫るラストを期待したわけではない。
でも、世界がこの二人を愛さなくても、観客には愛される二人を描いて
欲しいのだ。軽蔑に値する人間でも、どこか尊敬できる一面をもっている
はずだと愛する人に乞うてしまうのは、もはや自分ではどうしようもなく
相手に依存し、骨の髄まで与えてしまった馴の果てだと思わせて欲しい。
今作でその姿を見せてくれたのは、祖父の妾だった千代子役の緑魔子だ。
やんわりと語る仕草に相当の覚悟を秘めた女。
真知子にもその覚悟があったのに、そこを描けていないのがとても残念。
物語も配役も決して悪くないのに、勿体ないとしか言いようがない作品。
(まずはカズの魅力がもっと前面に出ないと苦しい。なぜ?が消化されない)