「これは現代版「アンネの日記」か?人は何故平和を選べず戦争を繰り返すのだろう?」君を想って海をゆく Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
これは現代版「アンネの日記」か?人は何故平和を選べず戦争を繰り返すのだろう?
映画では、描かれていないが、イラクのクルド地区を出発して、ひたすら歩き続ければ、ヨーロッパに出て、フランスの漁港の街カレに行き着く事が出来るのだろうが・・・
イラクのクルド地区に行った事が無い私には解らないが、きっと大陸続きに、この荒野を3カ月もの期間中彷徨いながらを歩き続ければ、着くのだろう、しかし、そこに生きて到着する事自体が奇跡的な事の様に思うのだ。どうやって、17歳のビラルは山越えをしたのだろうか?その苦難を考えてみただけでも、胸が苦しくなる。
最近の難民事情に明るく無くて、難民人口分布が数字的にどうなっているのか不明の為にその事に付いては記す事が出来ないが、しかしこの映画を観ると、こんな世界は、理不尽で狂っているとしか思えなくなるのだ。
確かに、難民を徹底的に受け入れていない、日本人には、フランス政府や、イギリス政府が難民を取り締まる苦労や、難民が増える事に寄る経済的損失、或いは治安の悪化のどの弊害が起きてしまう事などに付いて知らない私達には、これらの国々を非難する事は出来ないだろうが、しかしイギリスはアメリカのイラク攻撃を支持して、イラクの南部地方のバスラ一体を統治したりしていたのだから、戦争を仕掛けて、戦争によって行き場 (文字通り、生き場=生きて生活する場所を失ってしまった人々)を失ってしまった人々を、取り締まり、差別するなんて、理不尽だ。
元水泳金メダリストのシモンは、現在ラレと言う漁村で、水泳のコーチをしていて、妻のマリオンとは離婚調停の真最中である。そんなシモンの水泳教室にビラルはやって来て、水泳を習う事になる。
シモンは、このビラルがフランスから英国への超距離トラックの荷物に混ざり、ドーバー海峡の向こう岸のイギリスへ密入国を試みて失敗をした事を知る。
17歳のビラルは親友のミルコの妹のミナと恋中で、彼ら家族は、みんなでイギリス移住の申請が認められた為に、現在はイギリスに居るので、そのミナに会いたい一心でバスラから尚も、イギリスを目指している事情を知る。シモンは段々とビラルを知って行く中で、親子の様な絆で結ばれる。
皮肉にも、シモンがビラルをかくまっている事を嫌う、近隣の住人が警察にシモンの一件を密告する。その住人の家の玄関マットには、(WELCOME)の文字が描かれていて、それが、そのままこの映画の、原題名となっているのである。
難民を犯罪者でもあるかの様に扱う行政や、心なき人々が多い現実で、全く皮肉な事だ。
しかしどんな境遇でも、若さとは素晴らしいエネルギーの源だ!ビラルは未だ17歳なので、ミナに夢中であるが、それだけではなく、イギリスへ行ったら、マンチェスターユナイテッドに入団し、サッカーの選手になってミナと暮す事を夢にているのだ。
この夢に向かって、ひたすら歩み続けるビラルの中に、きっとシモンはかつての自分を見ているのだろう。シモンの妻のマリオンは学校の教師をしていて、難民に給食のボランティアをしている。この優しい2人はどうなるのか?ビラルの結末は?是非この感動を映画で観て、体験して欲しい!ところで、イラクでは本当にサッカーが盛んなのだ!