RED レッド : 映画評論・批評
2011年1月25日更新
2011年1月29日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
元スパイの熟年チームが披露する“非常識な処世術”が呼び起こす笑いと驚き
お年を召した消耗品軍団の激闘を描いた「エクスペンダブルズ」に続き、またもオヤジたちが大暴れする娯楽活劇が登場。しかしこの2作品、観た印象はまったく異なる。「エクスペンダブルズ」は傭兵たちが主役のミリタリー・アクションだったが、「RED」の登場人物は長らく虚々実々の特殊工作にいそしんできた元スパイたち。ストーリーも人物造形も後者のほうが圧倒的にひねりが利いていて、洗練&熟練の味がある。
ブルース・ウィリス扮するフランクはのどかな余生を送る元CIAだが、国家当局がRED(=RETIRED EXTREMELY DANGEROUS)というコードネームでリストアップしている“引退した超危険人物”だ。破壊や殺人などの裏仕事は何でもござれ。同じくいわく付きの過去を持つモーガン・フリーマンが老人ホームを、ジョン・マルコビッチが湿地帯の隠れ家を、ヘレン・ミレンが華麗なる洋館を抜け出し、危機に陥った主人公に加勢するのだ。この設定、この顔ぶれで面白くないわけがない。
ごく平凡なオバサンが突如刺客に変貌してバズーカをぶっ放すと、すかさずマルコビッチは豚のぬいぐるみから取り出したロケットランチャーで応戦。トム・クルーズの「ナイト&デイ」もそうだったが、こうした荒唐無稽な見せ場が平然と成立してしまうのもスパイ映画の醍醐味だ。疑えるものはすべて疑い、機知と仁義を尊ぶ。世間の常識など通用しないパラノイアックなスパイの世界を生き抜いてきた男と女のしたたかな処世術が、絶妙の笑いと驚きを喚起する快作に仕上がっている。
(高橋諭治)