「映画らしい映画」八日目の蝉 プライアさんの映画レビュー(感想・評価)
映画らしい映画
................................................................................................................................................
永作と浮気をしていた男の妻が妊娠した。
永作は生まれた子供を盗み出し逃亡、自分の娘として育てる事を決意。
指名手配される中、隠れ蓑としてカルト宗教へ辿り着いた。
しかし教団に別件で警察の捜査が入りそうになり、娘共々逃亡する。
そしてその時の友人の実家のある小豆島へ渡り、素麺工場で雇われる。
娘はその頃幼稚園児くらいの歳だったが、友達がたくさんでき、
永作自身も、親切な島の人達との生活に馴染んでいた。
しかし島の祭りに参加した事で悲劇が起こってしまう。
偶然写ってしまった写真が賞を取り全国紙に掲載されたのだった。
親子共々警察の捜査が伸びる前に島から逃亡しようとするが、
警察は一歩先に港で待ち伏せをしており、あえなく逮捕。
そこから20年くらい経ち、娘の井上は不倫の末妊娠する。
5~6歳の時に永作から取り返され本当の親のもとで育ったが、
両親との間はギクシャクしてあまりうまくいっていなかった。
そして両親の反対を押し切って1人で育てる事を決意する。
その時、一連の事件について取材したいと言う女性記者と知り合う。
この人(小池)は井上のまだ小さい頃を知っていた。
またこの人も訳ありで、男性恐怖症で男と交際した事がなかった。
井上は小さすぎて記憶になかったが、仮にも幼馴染であり、
また心に傷を持つ2人は親友のような形になり行動を共にする。
そして小豆島を訪れる。そして井上は忘れていた感覚を取り戻す。
永作のために自分の家族はギクシャクしてしまったが、
幼い頃の永作は本当の親のように優しく、その温かみを思い出した。
自分は永作を憎みたくない、そして腹の子が一層愛おしくなった。
写真館の親父曰く、5年ほど前に出所した永作がやって来て、
逮捕される直前に取った写真を引き取って行ったという。
彼女は彼女なりに井上を愛した思い出を大切にしているのだろう。
................................................................................................................................................
最近、TVドラマでええやんって言いたくなる邦画がやたらと多い中、
これはまさしく映画といった雰囲気のいい映画だった。
永作は薄幸かつ気丈な女性の役が上手やし、よく似合う。
きっとこの人自身、頑張り屋でとても優しい人なのだろう。
・・・などと妄想するのは、彼女をバラエティで見ないからである。
おれは俳優業に専念する俳優や女優が好きなのである。
その方が底が見えない分、いいイメージで想像できるもんな。
常識的に考えたらそれは無理のある設定なのかも知れんけど、
最後は永作と大人になった井上の再会のシーンが見たかった。
もし実際自分がこの数奇な運命を辿ったとしたらどう思うだろう?
永作にもう一度会って見たいと思うものなのだろうか?
やっぱりそれは複雑な気分になるんやろうなあ。
多くの愛情を受けたと同時に、最大の裏切りを受けた訳やもんな。
悪意のない、必死さが生んだ罪なら簡単に水に流せると思うけど、
それはあくまで普通に育った今のおれの意見なのであって、
傷ついた過去を持っていればそう簡単ではないんやろうなあ。
なお上記あらすじは便宜上時系列で書いているが、
実際には永作と子役/井上と小池のシーンが交互に流れる。
でもこれじゃ撮影的に永作と井上が顔合わす必要はないなと思った。
大きなお世話やねんけどね(場)
あと小池は心に傷を抱えた難しい役やったが、いい演技してた。
それから八日目の蝉ってのは、蝉は1週間で死ぬと言われるが、
8日目生きてたらどう思うのだろうって話。
みんな死んで寂しいだろうと普通は思ってしまうが、
もしかしたら8日目見えるものは美しい物かも知れない、と。
まあツッコまな気が済まん性格なので一応ツッコんでおくが、
蝉の寿命は約1週間であり、ちょうど7日ってわけではない。
しかもみんな同時に羽化して同時に死ぬわけじゃないので、
8日目生き残ったら寂しいって事もない。
ハイ、これで気が済みました(場)