ブラック・スワンのレビュー・感想・評価
全217件中、1~20件目を表示
思ったよりホラーっぽい。
【85.4】ブラック・スワン 映画レビュー
『ブラック・スワン』(2010)専門家批評
作品の完成度
ダーレン・アロノフスキー監督が長年温めた企画は、肉体と精神の極限状態を官能的かつグロテスクに描き出すことで、他に類を見ない完成度を達成。チャイコフスキーの「白鳥の湖」という古典バレエをモチーフに、完璧を求めるあまり自己破壊に至る一人のバレリーナの狂気を描いたサイコスリラー。現実と妄想が混濁し、見る者を不安に陥れる演出は、観客自身の精神をも蝕むような没入感を生み出す。古典的な芸術形式に現代的なサイコスリラーの要素を融合させ、肉体の美と精神の醜さの対比を巧みに描出。ナタリー・ポートマンの圧倒的な演技が核となり、芸術と狂気の境界線を曖昧にする。この作品は、アカデミー賞主要部門を含む多くのノミネートと受賞を獲得、批評家と観客双方から高い評価を受けた点も、その完成度の高さを証明。
監督・演出・編集
監督はダーレン・アロノフスキー。彼の特徴である強迫観念的な演出と、ドキュメンタリータッチの不安定な手持ちカメラワークが、主人公ニナの内面的な動揺を効果的に表現。特にニナの精神が崩壊していく過程での幻覚描写は、観客の視覚と心理を鋭く刺激する。編集のアンドリュー・ワイスブラムは、現実と非現実のシームレスな移行を可能にし、観客に混乱と不穏な感覚を植え付け。ニナの日常を細かく切り取り、彼女の精神状態を反映したカットが連続、息苦しいほどの緊張感を維持する。
キャスティング・役者の演技
ナタリー・ポートマン(ニナ・セイヤーズ役):
キャリア最高の演技と評された。バレリーナの役を演じるために1年以上にも及ぶ過酷な肉体改造とバレエ訓練を積んだ。その成果は、指先から爪の剥がれ、筋肉の震えに至るまで、全てを役柄に捧げたストイックなまでに完璧主義な姿に表出。純粋無垢な白鳥と、内に秘めた邪悪で官能的な黒鳥という二面性を、肉体的、精神的に完全に体現。精神の均衡を失っていく様を、微細な表情の変化から全身の震えで表現し、観客を魅了、圧倒する。この演技で、第83回アカデミー賞主演女優賞を受賞。
ヴァンサン・カッセル(トーマス・ルロイ役):
ニナの芸術監督であり、彼女を精神的に追い詰める存在。厳格でナルシシスティックな一面を持ち、ニナを挑発することで彼女の潜在能力を引き出そうとする。バレエ界の権力者としての威圧感と、ニナに黒鳥を演じさせるためのエゴイスティックな誘惑を巧みに演じ分け、物語に不穏な緊張感をもたらす。
ミラ・クニス(リリー役):
ニナのライバルであり、黒鳥の要素を象徴する存在。奔放で情熱的な性格は、ニナの自己抑制的なパーソナリティと対照的。彼女の存在は、ニナの内的葛藤を外部から刺激するトリガーとなる。肉感的で自由奔放な演技は、ニナの心理を揺さぶり、物語にダイナミズムを加える。この役で、ゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネート。
バーバラ・ハーシー(エリカ・セイヤーズ役):
ニナの過保護な母親。元バレリーナとしての挫折経験から、娘に完璧な成功を押し付け、ニナの精神を支配。彼女の愛情は歪んでおり、ニナの自立を阻害。そのヒステリックな言動はニナの狂気をさらに加速させる要因となり、映画全体に不穏な影を落とす。
ウィノナ・ライダー(ベス・マッキンタイア役):
ニナの前任のプリマ・バレリーナ。過去の栄光を失い、精神的に不安定な状態に陥っている。短い出演時間ながらも、ニナの未来を暗示するような存在感を放ち、物語に深みを与えている。
脚本・ストーリー
脚本はマーク・ヘイマン、アンドレス・ハインツ、ジョン・J・マクローリン。チャイコフスキーの「白鳥の湖」を原作としつつ、主人公の二重人格的な内面をホラーとサイコスリラーの要素で再構築。完璧主義と自己破壊というテーマが明確に描かれ、芸術家としての苦悩がリアルな恐怖へと変貌。しかし、物語の展開は、過去の映画やアニメーション(例:今敏監督の『パーフェクトブルー』)との類似性が指摘されることもあるが、バレエという特殊な世界観に落とし込んだことで独自の強度を獲得。
映像・美術衣装
マシュー・リバティークの撮影は、暗く不安定なライティングでニナの精神状態を表現。閉鎖的な空間と、広大な舞台の対比が印象的。美術は、ニナの自宅を幼い少女の部屋のようにすることで、彼女が母親の支配下にあることを示唆。バレエ衣装は、白鳥と黒鳥という二つの人格を視覚的に表現し、物語の進行に合わせて変化。特に、ラストのニナの衣装は、白と黒が混ざり合い、彼女の精神が完全に融合したことを象徴する。
音楽
クリント・マンセルによる音楽は、チャイコフスキーの「白鳥の湖」を大胆に編曲。クラシックの優雅な旋律に、サイコスリラーとしての不穏なノイズと電子音楽を加え、映画の狂気的な雰囲気を増幅。主題歌は特に設定されていないが、チャイコフスキーの原曲と、それを再構築したマンセルのスコアが全編にわたり響き、物語の重要な要素を担う。
作品 Black Swan
監督 ダーレン・アロノフスキー 119.5×0.715 85.4
編集
主演 ナタリー・ポートマンS10×3
助演 バンサン・カッセル A9
脚本・ストーリー マーク・ヘイマン アンドレス・ハインツ ジョン・マクローリン B+7.5×7
撮影・映像 マシュー・リバティーク
A9
美術・衣装 テレーズ・デプレス S10
音楽 クリント・マンセル A9
彼女は演り遂げたのか
トッププリマを夢見る女性が、主役に抜擢されるが、プレッシャーや焦りから精神のバランスを崩していく話。ナタリー・ポートマンが、白鳥の繊細さをよく表している。しかし、大胆不敵な黒鳥をうまく表現出来ない。自身の内なる黒鳥の解放を求められ、追い詰められていく。二面性を投影したようなリリーと親しくなり、更に妄想が加速する。
逆剥けを引き剥がしたり、爪切を失敗したり、見てるだけで痛くなるような描写が多い。首が白鳥のようにしなり、足に水かきが付き、鳥肌立った腕から羽が生え、くるくる回った最後は本当に黒鳥になるかと思った。
表現者の苦悩は伝わったが、プリマになるための厳しさなど、バレエ界をもっと描いて欲しかった。これではバレエではなく、劇団やオペラでも良かったような話だ。白鳥の湖のテーマ曲はやたら耳に残った。
ナタリー・ポートマンが本当にきれい。 全部じゃないにしろ、大部分は...
ナタリー・ポートマンが本当にきれい。
全部じゃないにしろ、大部分は踊ってるんでしょう、すごい。
精神的に追い詰められてくるニナのせいで、こっちまで疲れます。
ママは怖いし…💦
トマはそんなにいいオトコじゃないし…😅
ホラーとエロを見にきたのかっていうところも多かったけど、あっという間の2時間でした。
踊り子の世界を狂気に変えた熱演
2025年の今から15年前の映画だが、 トマのニナに対するさまざまな言動は パワハラやセクハラの類が多く含まれているような気がする。 今の時代ならこの映画がどう評価されるのか興味がある。
動画配信で映画「ブラック・スワン」を見た。
2010年製作/108分/R15+/アメリカ
原題または英題:Black Swan
配給:20世紀フォックス映画
劇場公開日:2011年5月11日
ナタリー・ポートマン(ニナ)29才
ヴァンサン・カッセル(トマ)
ミラ・クニス(リリー)27才
バーバラ・ハーシー(エリカ・セイヤーズ)
ウィノナ・ライダー(ベス)39才
バンジャマン・ミルピエ(デヴィッド)
クセニア・ソロ(ベロニカ)
クリスティーナ・アナパウ(ガリナ)
セバスチャン・スタン(アンドリュー)
ダーレン・アロノフスキー監督
有名演出家のトマの目に留まり、
プリマに抜擢されたニナ。
その重圧と役に対する執着心が生んだストレスから、
彼女は幻覚に悩まされるようになる。
ニナは次第に現実と幻覚の区別がつかなくなっていく。
2010年の映画なので劇中の携帯電話はガラケーである。
オレもガラケーからスマホに代えたのは2011年だった記憶がある。
2025年の今から15年前の映画だが、
トマのニナに対するさまざまな言動は
パワハラやセクハラの類が多く含まれているような気がする。
今の時代ならこの映画がどう評価されるのか興味がある。
劇中で表現されていることのどこからどこまでが
ニナの幻想なのかわからない(わかりにくい)部分があり、
終盤30分は見ていてとてもハラハラした。
映画撮影後にナタリー・ポートマンは共演者の男性ダンサーと
結婚したらしい。
知らなかったので、意外だなと思った。
ナタリー・ポートマンは2017年にダーレン・アロノフスキーが製作する
「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」に出演する。
満足度は5点満点で3点☆☆☆です。
突き抜けるには人間何処かで狂わなければならない
オマージュならクレジットに入れるべき
エロとグロが多すぎたかな
何事も程々にするのが一番なのかな
『白鳥の湖』の舞台裏と主演女優の喜怒哀楽
プリマに対する恐怖
ナタリー・ポートマンの演技は良かったが…
どこまでが真実で、どこからが妄想なのか
<映画のことば>
君の途をふさぐ者は、君自身だ。
邪魔物を取り除け。
自分を解き放て。
主役(プリマバレリーナ)の重圧に、ともすれば押し潰されてしまいそうなニナに対するアドバイスとして、これほど的確な助言が、他にあり得たでしょうか。
「君は芸術家か、それとも実務家か。
もし実務家であったとしたら、
常には完璧を求めてはならない。」
という一文を何かで読んだことがありましたけれども。
反面、バレリーナとしてのニナは、ある意味で、正真正銘の「芸術家」。
常に己の芸の完璧を求めなければならない宿命の重圧は、容易に評論子ら凡人の及ぶところではないと思います。
それこそ、抜いても抜いても、自分の体の中に、鋭い棘(とげ)が次々と食い込んで来るような。
そういう妄想のどこからがどこまでが現実で、どこから以上が(精神的な重圧の故の)妄想だったのでしょうか。
バレエ界という、外見的には華やかな世界だからこそ、その内幕の「厳しさ」「鋭さ」が、よりいっそう際立つのかも知れないとも思いました。
別作品『TAr/ター』と同じく、芸術の世界にまつわる「陰の部分」を描いた一本とも言えたと思います。
佳作であったと思います。評論子は。
(追記)
多くの映画.com率レビュアーが指摘するとおり、本当に本当に、本当に「怖い」映画でした。
「じんわりと包み込まれるような恐怖」とっても形容すべきでしょうか。
そんな恐ろしさでした。評論子には。
そこいらへんの変なホラー映画よりは、ずっとずっと怖かったたことを付言しておきたいと思います。
(追々記)
上記のような意味合いでは、「芸術に惑わされた末の転落」(映画.comレビュアーのジュンーさん)という指摘は正鵠を得ていて、本作の鑑賞の指針として、とても参考になりました。評論子には。
末筆になってしまいましたが、バンドルネームを記して、ジュンーさんへのお礼としたいと思います。
全217件中、1~20件目を表示