「二人のスピーチ」英国王のスピーチ みやびんさんの映画レビュー(感想・評価)
二人のスピーチ
この映画を一言で表すなら「友情が王をつくった物語」だと思います。表向きは英国王ジョージ6世の吃音克服と戦時下の演説を描いた歴史劇ですが、核心にあるのは彼とローグの間に生まれた深い友情です。
王でありながら人前で言葉を発することに苦しむジョージ6世。彼にとってローグは、単なる言語聴覚士ではなく、心の奥底まで踏み込んでくれる唯一の存在でした。形式を重んじる宮廷では得られない率直な対話、王族である前に「一人の人間」として扱ってくれる安心感。それがジョージの背中を押し、声を届ける力となっていきます。
二人のやり取りには、治療以上の温かさがありました。緊張で声が詰まるときも、ローグは決して苛立たず、冗談やユーモアで空気を和ませます。まるで「お前は一人じゃない」と言い続けているかのよう。友情の支えがあったからこそ、ジョージは国民に向けて堂々と声を響かせることができたのです。
戦争や王室の重責といった大きなテーマを扱いながらも、この作品の魅力は「誰かに寄り添われることで、人は弱さを超えられる」という普遍的な真理にあります。ジョージ6世のスピーチは王の義務であると同時に、友との絆が生んだ奇跡の証でした。
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