「過去を見つめ、未来を生きる」わが心の歌舞伎座 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
過去を見つめ、未来を生きる
歌舞伎座改築に伴う、2010年歌舞伎座さよなら公演を記念した松竹配給・製作のドキュメンタリー作品。
単純な歌舞伎、及び歌舞伎座の賛美・賞賛映画の枠に留まることなく、観客に対して「意外と面白い、格好良い」歌舞伎の世界を押し付けず、堂々と、分かり易く提示することに成功している。
往年、そして現役の歌舞伎俳優たちの業績を追いかけていく美談を淡々と語ることよりも、裏方、スタッフの普段は見えてこない仕事、稽古風景を見つめることに重点を置き、より奥深い味わいを出していこうとする作り手の意欲を十分に感じられるのも興味深い。製作に松竹が全面的に関わっている事から、身内びいきの演出と見る目があるかもしれないが、その反面、だからこそ舞台裏をしっかりと取材していくことが可能になっていることも忘れてはいけない。
作り手側の映画ドキュメンタリーを作るという意識が低いのか、せっかくの貴重な素材を、余韻を残す事無く、乱雑にフェードアウトさせることで、その魅力を使いこなせていないと感じさせる作風には違和感あり。しかしながら、歌舞伎の魅力に触れる入門編としての役割を果たすには十分な結果を残す本作。
騙されたと思って、幻想の古典芸術世界に足を踏み入れてみては?
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