「3D表現のネクストレベル! 人魚姫は白昼夢でしか泳げない」ラビット・ホラー3D 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
3D表現のネクストレベル! 人魚姫は白昼夢でしか泳げない
清水崇監督、最新作!
まず驚いたのは、軽く目眩を覚えるほど強烈な3D表現。
螺旋階段、水滴といった3Dに適した表現は勿論、
何気ない家の中の描写までぐうっと奥まって見えて驚愕。
更に驚いたのは……
あるシーンで窓から射し込む陽光が恐ろしいほどリアルに感じられ、
わざと片眼をつぶってみると、陽光が殆ど左眼にしか映っていない事に気付いた。
左右の眼に入る光量の違い!
日常でも時々は感じる事があるが、それを3D表現として用いるとは、何という感性!
正直、『アバター』以来の衝撃である。
そしてサイコサスペンスとしての面白みだ。
この映画最大のドンデン返し=“大吾は最初からいなかった”は、
これまでドンデン返し映画をさんざん観てきた方々なら
きっと予想のひとつとして頭に浮かんでいただろう。
しかしそこに至るまでのストーリーテリングが実にミステリアスで良い。
暗い頭の中と現実をふわふわ往き来しながら
ひとつずつパズルのピースを集めてゆく感覚。
終盤の『強固過ぎる想像力が実体化する』という
『ダークハーフ』的展開も考え付かなかった。
梯子を登る弟の影に恐怖を覚えるのは、
そこまで積み上げてきたドラマがあったからこそ。
3D映画内の3D映画。
とぼけた風貌の巨大ウサギ。
著名なお化け屋敷を廃病院として登場させる奇妙さ。
冗談とも思えるアイデアの数々も、かえって幻覚と現実の合間、
映画と現実の合間を曖昧にしているように感じられてなかなか妙味。
“人魚姫”満島ひかりの儚げな存在感も映画と絶妙にマッチしていた。
ところでこれは他の方々も考えたかも知れないが……
この映画、実はやはり“きょうこさん”の復讐譚だったのではと僕は思っている。
序盤、父親が納屋に入るシーンで現れた“きょうこ”はキリコの幻覚では無かった。
そして最後のウサギ人形の蠢きも、キリコが事切れてからの事だった。
“きょうこ”はキリコの想像力によって育てられた息子を、
キリコに現実を認識させることによって奪い返し、
キリコと引き換えに息子を現世に生み出そうとしたのではないか?
なんつって。
『呪怨』のようなインパクトのある恐怖が無いのはやはり残念だが、
物語も映像も、観れば観るほど旨味が出てきそうな佳作。
あ、もし未見なら、姉妹篇的な位置に当たる
監督の前作『戦慄迷宮3D』も鑑賞する事をオススメ。
こっちもなかなか良いですよ。
<2011/9/17鑑賞>