エル・トポのレビュー・感想・評価
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思っていたより、しっかりした作りでした
この作品に関しては、カルト映画、カルト映画と言われているので、そういう映画にはそれほど免疫がないので避けてきたのですが、新作が公開中ってこともあって、見に行こうか迷っていたこともあって、それならと、この代表作を観てみました。 それで心して臨んでみたのですが、私にはそれほどカルト的とは思えなかったですよ。むしろ、いや、これ、かなりしっかりと撮ってるんでないの?という印象が強かったです。世の中、もっとカルト的な映画ってたくさんあると思うのですが、この作品は、しっかりと筋もあるし、題材は聖書にとっているようだし、作者の意図は意外と分かりやすいような気もしました。なので、カルト映画という枠に留まらずに、広く見られてもおかしくないような気がしましたですね。 さすがに好きとまでは言えないかもしれませんが、新作も観てみようかという気にはさせてくれましたね。 やっぱり前半の砂漠のシーンが鮮烈でした。これはほとんど神話だなっていう気がしましたです。
神と人の間で
偉大な才能と自信を持つ男は神の村の女を助けることにより神格性を得る。
男は子を捨て神になる道を選ぶ。しかし女の村は一神教の村のため、「神は一人だ。お前が神になるためには他の神を倒さねばならない」という。
男は神としてまだ未熟である。他の神々には遠く及ばない。男は神々を越えるのではなく卑怯な手段で殺す。
しかし、男は神々を殺すことで神々を越える機会を永遠に失う。世界に神は男しかいなくなるが、男はいまだ未熟な唯一神であり、そしてこれからも未熟なままであり続けるしかないことに絶望する。
男に愛想を尽かした女もすでにいない。
男は弱く貧しい奇形の洞窟に拾われる。男はそこで徐々に人としての感情を取り戻す。
男は奇形の恩人を洞窟から街に出してやろうと奮闘する。
しかし男の宿命は「与えるつもりで奪っている」だ。
男は善意から奇形を穴蔵から出したが、奇形は日の光の眩しさに死んでしまう。
男は街に復讐するが、その中で無敵の肉体という神格性を再び発露させてしまう。
だが、神になることにもはやなんの気概もない、というか神より人であろうとした男は、まだ自分が人であるうちに自殺をする。
よかった
物語は三部構成になっている。
第一部は子供と砂漠を旅して、大佐と5人の部下と闘う。ここでエル・トポは無敵の強さを見せる。ここで出会った女を選び、子供を置き去りにする。
第二部は4人の達人と闘う。女が一番の男を求めたためだ。女はセックスをした途端そんなことを言い出して、エル・トポは4人の達人に嫌々挑戦する。エル・トポの実力は達人には及ばないのだが、卑怯な手を使って全員を倒す。しかしもう一人の女が現れて、女同士で旅立ち、エル・トポは置き去りにされる。
第三部はエル・トポを助けた奇形人間たちと過ごす。彼らは洞穴で暮らしていて、町に出るには何日もかけてよじ登らなければならず困っていた。エル・トポは横穴を掘るために街に出てお金を稼ぐ。町の人々はとても心が醜く、我欲むき出して退廃的な生活をしていた。そこでかつて捨てた息子と出会う。横穴が完成すると、奇形人間たちが町に押し寄せる。町の人々は、奇形人間を射殺し、エル・トポも蜂の巣にする。ところがエル・トポは何発撃たれても鬼人のような強さを発揮して町の人々を殺戮する。
昔、見た時は分けの分からない映画だと思ったのだが、落ち着いて見るとしっかりと筋が通っていた。時折鮮烈な映像があって、驚くのだが、必要なカットが足りない場面もあり、悪く言えば素人っぽい。エル・トポが何発も銃弾を受けながら、立ち上がり町の人々を殺戮する場面はとんでもない迫力で本来描かれるはずなのだが、とても淡々としていて、凄惨な印象があまりなかった。
私事で恐縮なのだが、オレも運命には素直に乗る方で、エル・トポの人生を見ていると特に自分で何かを強烈に選ぶわけではなく、流れに流されるまま行動を選択している感じがした。しかし、「やり始めたことは最後までやり遂げるんだ」という強い意志があり、見事に実践していた。そしてそれが最終的に悲劇を招いてしまうのだが、それは結果としてそうなっただけの事なので、だからと言って彼が間違っていたわけではない。その場その場で懸命に取り組むことが重要であることを強く感じた。
さすが
カルトムービーの秀作。 独特の映像様式美に則った、タブーの領域を押し広げる可能性を秘めた作品。 間違いなく記憶に残る作品である。 大量の血は、何に対しての生贄だったのか? 彼が描ききれなかったのは、唯一「臭い」だけだったのかもしれない。
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