ブンミおじさんの森のレビュー・感想・評価
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森という舞台装置のすごさ
この映画の死生観はすごい。森には死者と生者が渾然一体となっており、人間の文明から遠く離れた世界が展開している。森に迷い込むことで方向感覚を失い、異界にさまようかのような感覚を覚えるような、映画全体もどこに向かうかはっきりと示さず、見ていると方向感覚を失いそうになる。はっきりと言えないが、極めてアジア的な感性で、西欧のフィルターを通さない土着的な感覚がある。日本の自然崇拝にも通じる畏怖の感覚にも通じるような何かがこの映画にはある気がする。森という舞台を映画でこれだけ深く掘り下げた作家はアピチャッポンだけではないかという気がする。森は実はかなりすごい舞台装置なのだと思い知らされた。森なら何が起きても不思議じゃない。この映画を見るとそういう気分になる。
後半の洞窟のシーンもすごい。地球の胎内とでも言うべき洞窟で、前世の記憶を見て、死んでゆくブンミおじさんの姿に生命の壮大な流転を感じる。すごい映画だ。
私には難しすぎた…
難解という訳でもないんだが
「光の墓」よりはまだ親しみやすかったかなあ。
カンヌはこういったアジアの自然の風景が好きなんだよね。静止画があったり、前後無関係に思えるシーンがあったりで、やはり完全な理解は不可能だったが、カンヌの審査員はどういう評価だったのか?想像すらつかない。
東洋人の心の奥底にある「深遠さ」?
猿の妖精?
いつしか
これは何だ……!
境界の森…?
光と闇
森、洞窟、闇は、人間と非人間の境界がほどける空間であり、幾多の怪異の源泉だ。そこは子宮のようであり、まるで前世を思い出させてくれるような場所だ。本来、恐ろしいものではなく、むしろ安心を与えてくれる。
自分の頭の中でたゆたう記憶やイメージは、時間も空間も超えている。
明け方の森で彷徨い、ひとときの自由を味わう牛。宝石を脱ぎ捨てナマズと融合する王女さま。共産主義者への弾圧により森へ逃げ込む若者。それはまるでサルの精霊となったブンソン。
様々なイメージの蓄積が、観る者の想像を掻き立てる。
では、森や洞窟の無い都会で、私たちの魂はどう彷徨えばいいのか。
それはテレビを見る時間である。肉体はテレビの前に置き去りにして、魂は大いに彷徨えばいい。
退屈。ただひたすらに退屈。 死にかけのブンミおじさんが主人公?どう...
異種独特のワールド
ポテンシャルは十分だが心に響かない悟りの世界
なんとも不思議な映画。
2009年がミヒャエル・ハネケ監督の「白いリボン」。
それに次いで2010年にこの「ブンミおじさんの森」がパルム・ドール賞を受賞した。
同じようなモチーフと云うか、肉親の死者が現世に現れる、といった内容のものは大林宣彦監督の「異人たちとの夏」があるが、これはまた違った作品だった。とにかく不思議なトーンで淡々と描写するブンミおじさんとその家族の物語。そして意味深な、幻想的でもあるエピソードが抽入されている。
死期を悟った者のところに、森の中から先にこの世を去った者が現れ、家族そろって和やかに会話する、そういったシチュエーションだけでも何か心にジンとくるものがある。この先どうなるのだろうと気持ちは急かされるが、
あくまで物語りはゆっくりとしたペースで映し出される。タイの自然をバックにメルヘンとも言える不思議な物語。そう、たまにはこんな映画も心地よい。難解といえば難解。だが不思議な魅力がある映画であるのは間違いない。
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