その街のこども 劇場版のレビュー・感想・評価
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奇跡的な映画
僕の中ではあの「ソーシャルネットワーク」よりも好きな映画になってしまいました。生涯ベストと言っても過言ではない。まぁ僕の中ではの話ですが...
この映画のよかったところ且つ印象に残ったところは,1月17日の出来事を「震災」と呼ばず「地震」と呼んでいたことにあります。あの未曾有の大災害も,当時の怒りや悲しみも全て被災者にとっては日常の中に埋め込まれたものであって何一つ特別なものはないんだなと思いました。だからこそ平凡な「地震」という言葉で当時のことを指し示したんだと思いました。僕らがあの日見ていた震災は完全に「外」から見たものですから,本当に内側から見てた人たちのことなんか知る由もありませんよね。この映画はその「内側にいた人たちの思い」を映し出してくれたように感じました。
登場人物の感情移入もハンパじゃなかったです。あの二人が僕は好きで好きでたまりません。恋人でない男女2人が夜の神戸を歩き倒す様子も最高だったし。最初の居酒屋での無理して会話を弾ませようとする感じもわかるし,もう全部が全部最高の二人芝居でした。
映画としては歩き倒すだけのロードムービーで見せ場や盛り上がりがなくて,でも,合間合間のドラムの単音が個人的な生理に合致してたこともありとても心地よいミニマムさを醸し出していました。
このミニマムさがあってこそ,終盤ある人が手を振るシーンが最高に泣けました。映画に奇跡が起こったとさえ思えるシーンで涙が止まらなかった。東遊園地に近づくに連れて次第に人が多くなっていくのもまるで地震後の復興の様子を象徴するかのようで,もうその辺の映像全部で泣きっぱなしでした。
「また来年」というラストもよかった。来年も再来年も,二人はここに集まるんだろうけど,でも今年は行かないという選択をした中田くんにも思わず涙。泣けるんだけどそれは未来への希望が残されるラストだったからですよ。この映画が何で泣けるかって,悲しさとは全く異なる感情で泣かせるんですからこれはすごいことだと思います。
あんまり泣ける泣けると言っていたら期待値が下がると思いますけど,それでもいいから見に行ってほしいです。素晴らしい映画でした。
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