「しみでるう」その街のこども 劇場版 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
しみでるう
一昨年、NHKで放送された阪神・淡路大震災15周年を機に製作された作品に、未公開のシーンを再編集して映画化。
森山、佐藤の自然体を地でいく爽やかな演技も楽しませていただいたが、それ以上に本作で光るのは、脚本、渡辺あやの作り出す気持ちよさにある。
「ジョゼ」や「天然コケッコー」でも発揮されていた良い意味での田舎臭さが今作でも見事にはまりこんでいる。現代の脚本家において、ここまで自然に、無駄なく方言を使いこなせる名手はそうはいない。何気ない言葉の中にあるやるせなさ、苦しさ、相手に対する優しさが違和感なく、穏やかに物語の中にしみだしてくる。練りに練った硬い台詞のもつ重い雰囲気も大事だが、これだけほんわかと柔らかく幸せが溢れ出す関西弁もまた捨てがたい。
震災を超えて、それでも生きていく若者を突き放さず、寄り添い過ぎず、微笑んで見守る。何かと沈痛な同情が付きまとう被災者を描く物語とは違う開放感は、非常に心地よい。
ああ・・・幸せが、喜びが、しみでるう。知らずに、笑顔になる作品です。
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