「人生を切り取って、スクリーンに映したような。」ばかもの くるまどろぼうさんの映画レビュー(感想・評価)
人生を切り取って、スクリーンに映したような。
映画史上には残る大作ではないかもしれないけれど、
これを観られた今日はいい日だったな、と思える映画だ。
決して壮大な感激な語り口調の物語ではなく、
ひとりの人が出くわす出来事や感情を丁寧に描いている。
たとえるなら、スポットライトで照らして見せるのじゃなく、
陰を映すことで物事の形をハッキリ浮かび上がらせるような丁寧さ。
映像的にも、昼間の暗い廊下とか、喫茶店の窓際の陰影とか、
顔の表情はよく見えないはずなのに思いが伝わってくる、
というシーンが多かった。
それを踏まえた上でのラストシーンも美しい。
成長とか挫折とか恋愛とか友情とか愛情とか、安易に使われる言葉だけれど、そして使ってしまいそうになるけれど、そういうカテゴリーで語れるもんばっかりがこの世にあるんだろうか本当だろうか? そんなふうに安易には名付けられないものを、原作者の絲山さんは生き生きと描く作家だ。
名付けの代わりに物語があるんだなー、
ということを納得させてくれる。
原作のディティールを、映画向けに変更している部分もあり
それが自然に仕上がっているのも心地よかった。
内田有紀のハダカは麗しかったし、
成宮寛貴のアル中っぷりは迫力があった。
良い俳優さんばかりの邦画は見応えがある。
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