「井上大輔氏が作曲・編曲・歌唱を務めた主題歌「哀 戦士」、挿入歌「風にひとりで」はアニメという枠を超えた名曲。同氏の歌声と楽曲が作品の完成度をさらに高めてくれましたね。」機動戦士ガンダムII 哀・戦士編 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
井上大輔氏が作曲・編曲・歌唱を務めた主題歌「哀 戦士」、挿入歌「風にひとりで」はアニメという枠を超えた名曲。同氏の歌声と楽曲が作品の完成度をさらに高めてくれましたね。
新作アニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』の先行上映および地上波開始で再評価される「機動戦士ガンダム」の劇場版三部作が4月27日(日)新文芸坐さんにて一挙上映、40数年ぶりのスクリーン鑑賞。
『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』(1981/134分)
テレビ版第16話から第31話前半まで再編集版、夏休みシーズンの1981年7月に公開。
地上波再放送で内容が学校でも浸透、『ガンプラ』もほぼTVシリーズに登場したモビルスーツが発売されブームが爆発した時期。
放課後は毎日近所の模型屋、文具店、玩具店、スーパーなどに新規入荷を巡回していましたね。
当時は一番のお気に入りランバ・ラル大尉の「グフ」を皮切りに黒い三連星「ドム」、「ゴック」「ズゴック」「ゾック」「アッガイ」などモビルスーツのオンパレード登場、単純にそれだけで狂喜乱舞でした。
「哀・戦士編」というサブタイトル通り、マチルダ・アジャン、リュウ・ホセイ、ジオン側もランバ・ラル、クラウレ・ハモンと多くの登場人物が戦場に散りますが、特にTV版第27話「女スパイ潜入!」と第28話「大西洋、血に染めて」で描かれた女スパイ ミハル・ラトキエとカイ・シデンとの出会い、戦場下で妹弟のためにスパイとなるミハル、それを知った上で機密情報を漏らすカイの心情、そして今生の別れに公開当時も涙したものです。
カイ・シデンのCV、古川登志夫氏は同時期『うる星やつら』の諸星あたるも務めており、両キャラとも余計な口数多く、皮肉っぽく、日和見主義で協調性ゼロの一方、内に秘めた熱いハートを持つところにアムロとは別の人間臭さと親近感が湧いて両キャラとも人生のお手本として今でも愛おしいキャラですね。
本作では特に音楽面。
井上大輔氏が作曲・編曲・歌唱を務めた主題歌「哀 戦士」、挿入歌「風にひとりで」はアニメという枠を超えた名曲ですね。
尚、作詞は井荻麟のペンネームの富野由悠季氏。
当時同曲でTBS「ザ・ベストテン」に堂々ランクイン、歌いながらサックスを吹くパフォーマンスに歓喜しておりましたが、井上氏が「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」のリード・ヴォーカル、フルート、サックス担当で、全米NO.1の音楽番組「エド・サリヴァン・ショー」やグループ・サウンズで唯一紅白出場、その後もフィンガー5「学園天国」、郷ひろみ「2億4千万の瞳」、ラッツ&スター「ランナウェイ」「め組のひと」などを提供する超一流アーティストは全く知りませんでした。
富野由悠季氏と日大芸術学部の同級生の縁から引き受けたとのことですが、井上氏の歌声と楽曲が作品の完成度をさらに高めてくれましたね。