「ロボット映画の到達点。」映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち しゅわとろんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ロボット映画の到達点。

2025年2月4日
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鑑賞方法:映画館

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ファンの投票で選ばれた劇場版の名作を上映する「シリーズ45周年記念!ドラえもん映画まつり」。その締めくくりとなるのがこの「新・のび太と鉄人兵団」である。
私にとっては実に十数年ぶりの鑑賞となったのだが…これほどまでに深く、心を打つ物語だったとは。想像を遥かに超えた名作であった。

真夏のある日。ひょんなことからドラえもんと口論になったのび太は、すねたドラえもんを追いかけ赴いた南極で、奇妙な青いボールを発見する。そのボールはなんと、巨大ロボットの部品を転送する装置であった。ボールを持ち帰り、転送されてくる部品を組み上げ、巨大ロボット「ザンダクロス」を完成させて遊ぶのび太たちだったが、それは人類の命運を懸けた戦いのほんの序章に過ぎなかった……。

原作者藤子・F・不二雄先生の描いた大長編「のび太と鉄人兵団」、そしてその映画化作品。それらをリメイクしたのが本作である。
前半まではいかにもドラえもんらしいコミカルなノリが繰り広げられるが、後半はテーマ性・展開共に非常にシリアスな物語となっている。
大まかなあらすじは同じだが、旧作との大きな違いはザンダクロス(ジュド)の頭脳が変身したキャラクター「ピッポ」の存在だ。このピッポとのび太との友情、そしてゲストヒロイン・リルルとしずかちゃんとの交流が、後半のストーリーの大きな軸となる。
原作のストーリーも十分面白いのだが、ピッポの存在が「友情」というテーマを深化させており、単なる改変・マスコットキャラクターに留まらず素晴らしいカタルシスをもたらしてくれる。
旧作からのヒロイン・リルルも現代的な作画で美少女っぷりに磨きがかかっただけでなく、任務と友情の間で揺れ動く心情描写、しずかちゃんとの会話で語られる「歴史の繰り返し」「差別」といった重いテーマ、そして本作オリジナルの設定によって、極めて魅力的なキャラクターに仕上がっている。しずかちゃんがリルルの手当てをするシーンの作画に、漫画へのオマージュがあるのも評価点だ。

お馴染みのメンバー達の活躍も見逃せない。怖気づくスネ夫にジャイアンが喝を入れるシーンは思わずグッと来た。小学5年生にして世界の命運を託されるというとんでもなく苦しい状況の中、悲壮な覚悟が垣間見える名シーンだ。

度々ツッコミどころへのフォローとして、SF的ロジックが語られるのも良い。子ども向けであっても子どもだましではない、制作陣の「SF」としての取り組み方も垣間見える。

作画クオリティも驚異的だ。戦闘シーンの爆発によって巻き起こる粉塵、無数の鉄人兵団、軽やかに動くザンダクロス……殆どCGを使わず手描きで仕上げられている。特に最終盤、巨大要塞に挑むザンダクロスのシーンは、ガンダムも顔負けレベルの超作画である。展開も相まって目頭も心も熱くなってしまった。

本編のパワーもさることながら、BUMP OF CHICKENの主題歌「友達の唄」が緩んだ涙腺を決壊させに来る。のび太とピッポ、しずかちゃんとリルルの友情を思わせる歌詞が、本作の〆として最高だ。

「ドラえもんだから」「子ども向けだから」等と食わず嫌いする事なく、多くの方に観て欲しい。紛れもなく良質な「ロボットアニメ映画」だった。

しゅわとろん