「形にはまらない家族が教えてくれる、家族とは?」キッズ・オールライト 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
形にはまらない家族が教えてくれる、家族とは?
ニックとジュールスはレズビアンカップル。ニックには娘ジョニ、ジュールスには息子レイザーがいて、家族4人で幸せに暮らしていた。
ある日ジョニは自分の父親が気になり、探し出して精子提供者であるポールと会う。
ポールの登場が、家族に思わぬ波紋を呼ぶ事に…。
同性愛を題材にしながらも明朗な作品に仕上げたのはハリウッドらしい。これが日本だったら辛気臭く、韓国だったらメロドラマっぽくなる所。
勿論ただコミカルなだけでなく、きちんと問題も提起。それも同性愛云々ではなく、普遍的な家族の物語として。
冒頭、家族で夕食を取っていると、ニックが帰って来て、パートナーのジュールスにお帰りのキスをする。普通の家族と何ら変わらない光景。人目には変わっているかもしれないけど、こんな家族も有りだ。
しかし、それぞれ秘密や悩みを持っている。
ニックはポールがどうも性に合わない。
ジュールスはニックを愛していながらもポールと関係を持ってしまう。
ジョニは進路に悩み、最近ぎこちない母二人よりポールと親しい。
家族とは言え違う感情を持っている一人一人の人間。
そんな時、ジュールスの浮気がバレて、ニックはショックを受けるが、もっとショックを受けたのはジョニ。
イイ人だと思っていたポールに裏切られた気がし、母二人への不満や淫らな大人たちの姿に怒りを爆発させる。
でも、これが家族を見つめ直させる。
馴れ合いや綺麗事だけじゃないのが家族。そういうのを乗り越えて絆を深める。
ポールがまるで間男のようだが、彼だって悪い男ではない。大らかで人当たりも良く、何より家族が欲しかっただけ。
だが、家族の輪を乱した部外者。子供たちの父であってもだ。
「家族が欲しいなら自分で作りなさい!」
ラスト、ニックがポールに言い放つセリフはシビアでもあるが、家族を守ろうとする大黒柱の言葉に他ならない。
一家の大黒柱アネット・ベニング、イイ女っぷりを見せるジュリアン・ムーア、ハリウッドを代表する演技派女優二人がさすがの名演。
下手すればキザっぽいポールをマーク・ラファロが絶妙に嫌み無く演じ、好感。
そしてミア・ワシコウスカが可愛い!透き通るような白い肌、サラサラの長い金髪…。「アリス・イン・ワンダーランド」の時も充分可愛かったが、今回は難しい年頃の女の子っぽさがイイ。
一風変わった家族の形。
そんな家族が、家族の営みや絆を教えてくれる。