「思った通りで、思った以上」あぜ道のダンディ きのこの日さんの映画レビュー(感想・評価)
思った通りで、思った以上
わああわああああい。
とても、とっても好きな作品に出会いました。
だから映画やめられない。
あぜ道のダンディ。
邦画です。これぞ邦画。。
こういうの。
ドキドキハラハラする展開とか、そっちか!って思うストーリー展開とか、こう撮るのね!っていう斬新なカメラアングルとか、こうきたか!っていう配役とか。
そんなのは一切無い。
思った通りで、思った以上にそっとした幸せと涙をくれる作品。
なんか映画が生まれて何百年ですかね、これだけ時間たってたら、本当の新しいものなんてない気がします。
だからこそ、スタンダートが一番。その中でちょっとした新しさとか深い思いが光っている作品が素敵だなとわたしはおもいます。
そしてこのあぜ道のダンディ
光石さんの時点で、お、こりゃ見るぞとなりました。
光石さん、最近?ウッジョブと共喰いで拝見いたしました。
いやもうまったく違う人物像で。
特に共喰いの光石さんなんてもうどうしようもないオヤジなんだけども。
いい意味でどっちの印象も残っていなくてすごい。
光石さんだ、って思うけど次の瞬間には光石さんじゃない。すごい役者さんですたい。
さて、あぜ道のダンディ。
石井裕也さんの作品は最近、「ぼくたちの家族」を見たんですが、それよりこっちのほうがすき。でもぼくたちの家族もよかったし、何気ない家族を書かせたら天下一品。
ていうか配役が絶妙な監督さんな気がします。
この作品も然り、ぼくたちの家族しかり、それぞれの役者さんがそれぞれの収まるべきところに収まっているというか。
ぼくたちの家族の、今どきのヨメっぽい黒川芽以もたまらん良かった。
おっと、あぜ道のダンディ。
もう、光石さんの宮田がかわいくてかわいくてどうしようもない!
そしてまた子供たちもかわいくてかわいくて。
森岡龍さん演じる俊也くん、とっても素敵でした。
浪人生でもうほんとニートに近くてゲームばっかやってて。
でもやっぱり母親を早くに亡くしてとてつもなく寂しい。
ある日、先に大学に進学してる友達(まさかの染谷翔太)と喫茶店でゲームしてて俊也君がいう。
「お前の家行きたい」
「俺んちなんか来てもすることないよ。なにすんの」
「とにかく行きたい」
そして染谷君ち行って、ご飯を作ってくれるお母さんをガン見。
「ババアの飯まずいだろ?」っていう染谷君に愛想笑いをして、ご飯をほおばる。
そして、帰る時に、「(染谷君の)お母さんに挨拶しないと」っていう。
染谷君が、「え、そんなのいいよ、寝てるし」っていうんだけど、「だめだよ」っていう。
ほんで、ドアまたいで、聞こえないのにいう。
「お母さん、ごちそうさまでした。」
「いや、だから別にいいって」
「いや、駄目だよ。お母さん、お邪魔しました。」
なんか、「いや、駄目だよ」がほんとにすごくて。泣いた。
駄目なんだよね。ずっと居てくれるわけじゃないから、大切にしないとダメなんだよ。お母さんって大切なんだよ。いつか、居なくなるんだよ。
そんな見えなくて凛とした思いの含まれている言葉。
悲しいくらい人間は持っているものの大切さがわからない。亡くして初めてとは本当によく言ったもんで。失ってはじめてならまだいいけど、亡くして初めてが多すぎる。
たぶん、俊也君はお母さんを無下にはしてなかったと思うし、大切だってわかってたとおもう。
それでも亡くさないとわからないんだ。
そしてねー、田口トモロヲと光石さんの中学から同級生コンビのやり取りがかわいくって!息子と一緒にゲーム対戦したくて買ったゲーム機が型番違ってやむなくゲーム対戦二人でしたり。
(田口トモロヲは、7年間介護をしていた父が最近死んだという役どころ)
すぐ昔みたいに喧嘩して、半ギレしながら「ごめん!」って言ったり。
あとは光石さんの宮田もかわいくって。
死ぬと思ったから撮った遺影を子供部屋にそっと置いてみたり(しかも猫と映った変なやつ)、子供としゃべりたいのにしゃべれない。
他にもいっぱいいっぱい素敵なシーンがあるので是非見て頂きたい!!
ぜんぜん書ききれなかった・・・
自分がやらないといけないことなんて分かってるのに。
伝えないといけない事なんて分かってるのに。
大切だし、愛しているからこそ、恥ずかしいことがあって
上手く言葉にできない。
言葉にしないといけないことだって知っているのに。
分からないから、とりあえず進んでみる。
まっすぐじゃないけどまっすぐ。
まっすぐじゃないのに進むから、躓くけど
進んでみる。
転んで泣いてどうしようもなくなったら、帰っていいですか
それが家族であってほしいな。
っていう感じの映画。