源氏物語 千年の謎 : インタビュー
多部未華子、初の時代劇で得たかけがえのない財産
多部未華子が、「源氏物語 千年の謎」で初の時代劇に挑戦した。「源氏物語」の主人公・光源氏がたどる華やかな愛の遍歴と、作者である紫式部の秘めた愛が並列で描かれる壮大な歴史絵巻で、多部は源氏の正室・葵の上という役どころ。撮影途中からの参加だったが、源氏役・生田斗真のリードもあり、濃密な時間を過ごしたという。「貴重な体験だったと思います」と振り返る表情からは、充実感がにじみ出ていた。(取材・文/鈴木元、写真/本城典子)
「源氏物語」は、清少納言の随筆「枕草子」、紀貫之らが編さんした「古今和歌集」などと並び、かな文字ができ上がった平安時代の代表的な文学作品。だが、多部にとっては歴史の教科書で習った程度の知識しかなく、しかも紫式部が藤原道長に寄せるほのかな思いが盛り込まれた独創的な脚本はかなりハードルが高かったようだ。
「実は、あまり内容も分かっていなかったですし、この作品に携わっていなければいまだに知らなかったと思います。脚本を読んでもなかなか理解ができなくて、葵の上のシーンも短いし、難しいなと。でも、面白そうだとは思いました」
とはいえ、思いもよらず源氏の正室となる葵の上の心情を察し、イメージを膨らませるあたりはさすがだ。
「素直ではないし、夫婦関係もすごく冷めている。どうしてなんだろうと思って(脚本を)読み進めていったら、源氏たちと身分が違うのでプライドがあって、姫として生まれた気高いところも持ち合わせている。愛情たっぷりに育てられてきたので、愛を知らないわけではないんでしょうけれど、いきなり源氏が夫になると聞かされたとまどいもあったということを知っていったんです」
葵の上は源氏と打ち解けられず冷たい態度をとるが、夕顔や六条御息所らほかの愛人とは決定的な違いがある。それは、源氏の子を産むという点。しかも、その後に源氏を愛するあまりに生霊となった六条御息所にのろい殺されてしまうという複雑なキャラクターで、強烈なインパクトを残す。
「子どもが生まれたことによって夫婦のきずなはちゃんと芽生えていたので、ほかの女性たちとは違ったつながりがありました。でも、次のシーンでは殺されてしまうみたいな。登場時間は短いのに、山場はいっぱいありましたね」
撮影にはクランクインから数日たってからの参加。そのため特別な役づくりはせず、十二単(ひとえ)をはじめとした衣装を着て、かつらをつけることで意識を高め、平安絵巻の世界に入っていったという。相手役となる生田の存在も大きかったようだ。
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