「偉大なる殺人鬼の牽引力に打ちのめされる血祭りの世界」冷たい熱帯魚 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
偉大なる殺人鬼の牽引力に打ちのめされる血祭りの世界
実際に起きた凶悪犯罪をベースにした血みどろのグロテスク描写に顔を歪める場面が多かったが、最後まで狂気の世界に面白さを見いだせたのは、オーナーを演じたでんでんの強烈なキャラクターに尽きる。
普段は満点の笑顔で弁が立ち、人懐っこく接してくるが、一転、人を人とも思わず、バラバラ殺人を繰り返す残虐な鬼畜の顔が迫っていく。
オーナーの裏表の激しさが、店主を血肉を細かく切り刻む地獄に後悔の念なぞ持たせる猶予もなく引きずり込む。
仕事にセックスに金にバラバラ殺人に…
冷静かつエネルギッシュに、他人を地獄へと牽引する説得力が爆発しているのが映画における殺人鬼スターの鉄則なんやなと思う。
レクター博士然り、殺し屋1の垣原然り。
血まみれで解体した直後に笑顔でコーヒーを作ってくれと催促する。
あのキチガッた愛嬌が、共犯者として巻き添えになる人の心を掴むんやろね。
最近、戦争映画やパニックものを立て続けてきたが、その中で最も血生臭く、そして、人間臭かった。
オーナーの血祭りに打ちのめされると、ピラニアのビキニ美女喰い放題なぞ所詮、ガキの遊びである。
では、最後に短歌を一首
『水の底 血と愛嬌で 愛撫して 肉までしゃぶって 透明にする』
by全竜
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