「一見の価値あり。見どころは人間心理。」冷たい熱帯魚 waxcafeさんの映画レビュー(感想・評価)
一見の価値あり。見どころは人間心理。
シネ・リーブル池袋で観てきました。
男性向きの映画だろうなと思っていのですが、
わりと女性客も多かったのが意外でした。席はほぼ満席。
予告編を観ればこの映画の性質はほぼ理解できますが、
猟奇殺人を取り扱った、スプラッター、エロ要素満載の大人の映画です。
そんな過激な部分が目につく映画ではありますが、
それはこの映画を構成する要素の一部に過ぎず、
緻密な人間描写やストーリーなど、
この作品の本質的な面白さは別にあると感じます。
吹越さん演じる主人公「社本」は、どこにでもいそうな
平凡で、真面目で、ささやかな幸せを望んで生きている気弱な男。
その彼が、でんでん さん演じる「村田」の巧みなペースに飲み込まれ、
とてもとてもヤバイ状態へ(家族もろとも)引き込まれてしまいます。
自分ならどうするだろう?と思わず考えずにはいられない場面ですが、
主人公と同じ状況におかれたら、
自分も同じ道を歩まされたかもしれないと思えて本当に怖くなります。
この映画の怖さは、まさにこのような人間心理にあるのだと思います。
正直スプラッター的要素は、観ているうちにだんだん慣れてきます。
それもそれで怖いですが…
悪人役の村田ですが、これがなかなか憎めないキャラクター。
いわゆる詐欺師キャラなんですが、
とにかくハイテンションでよく喋る。
「こんな人、いるよな~」なんて、可笑しくなりつつも、
巧みな話術、人心掌握術で、人の心をもてあそぶさまは、
少し憧れてしまう部分でもあります。
話が進むにつれ、この村田が、
主人公のメンター的存在になってくるんですが、
「殺人」を抜きにすれば、なかなかイイこと言っていて感心します。
というわけで、観終わった後、それなりに得られるものもあり、
一見の価値あり。といった映画でした。