「実在事件をでんでんの驚異の破壊力で描く!」冷たい熱帯魚 だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)
実在事件をでんでんの驚異の破壊力で描く!
ホラーを超えた、恐ろしいまでの作品が産まれました!
本作品は、数々の映画賞を受賞しています。園子音監督自ら最高傑作と話しています。が舐めてはいけません。めちゃくちゃグロイです、めちゃくちゃ怖いです、めちゃくちゃ後味悪いです、めちゃくちゃ辛いです。でも、この世界観、最後までどっぷりのめりこんでしまい途中で絶対やめられない。
なんたって人間解体シーンが出てきます。確かにグロいのです。でも、それ以上に人間の弱さ、愚かさ、怖さの方の描写が断然に深く、映像以上に印象に深く突き刺さってくるのです。
でんでん演ずる村田の悪役っぷりがもの凄い!演技が凄すぎる!話術、説得力そんでもって強制力!言葉、表現力がこれほどまでに犯罪の武器になるとは。一見やさしくお人よしにしゃべる村田、しかしそれは自己中心で地獄への道しるべ。人を殺すことなんかお手の物!楽しんで人間を切り刻んで抹消し、魚に食べさせてしてしまいます!死体が出て来なければ犯罪にはならないのですから!!!
一方、吹越満が演じるは、前妻との子供を残し再婚したが全く会話も無い冷めた生活を送る。自分の意思も持たず、断ることも出来ない一家は格好の村田の餌食に。いつの間にか共犯者とさせられた男の行き着く先は・・・。開き直った人間はここまで変われるものなのかと感じてしまいます。
いい意味で期待を裏切られ続ける展開は、先がどうなるかも全く予想できません。どれだけ残酷な結末になるんだろうと不安を抱きながらラストまで突っ走り続けるしかないです。約150分の長丁場ですが、全くだらけさせてくれず、緊張感で息を呑み続けないといけないのです。
こういう映画にエロシーンはつき物ですよね。いわゆるエログロと言われるもの。このシーン必要なのか?って思わせる、いわゆる客寄せ的なエロシーンと感じることが多いのですが、本品には必要不可欠でした。人間の欲望を描くだけではなく、愚かさまで描ききります。個人的には、グロいシーンよりもむしろエロシーンの方が強烈に嫌悪感を感じ、後味を悪くさせました。
特に、黒沢あすかが演ずる村田の妻としての生き様が強烈でした。強い男に惹かれ、裏切る姿がむなしさすら感じてしまう。ラストの彼女の生き様は、同情すら抱いてしまうのです。愛してくれる男を裏切った。しかし最後は愛してくれる男に行き着いた。行き着いた先がまた強烈…。
1993年に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件を参考とした物語だそうで。
っていうか、実際にあった事件なんだね・・・。