「愛することは、できる。」まほろ駅前多田便利軒 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
愛することは、できる。
私のように原作を知らない人間は、
タイトルと出演陣をザッと見て、おそらく、のほほん映画だと思う。
最近、やや流行の?多くなった?一体何が言いたいんだ的作品。
でも本作はそれらとはまったく違う^^;
のほほんのようでいて、いい加減のようでいて、至って真面目。
描かれるテーマはズバリ、家族の絆。愛し愛されることへの賛歌。
二人の男の行動が、悲しく可笑しい人生を疑似体験させてくれる。
便利屋・多田(瑛太)と、転がり込んでくる行天(龍平)の過去には、
多田が行天にケガをさせた、というエピソードがあり、それを
やたらと行天が示唆する場面が多い^^;小指の思い出とか歌うしv
(なんじゃ!こりゃぁ~!→ぜんぜん似てねぇし。も笑えた)
しかしそこには「気にするな!」のメッセージがほろほろと流れて、
行天の行動がイヤミのようでイヤミでないことに気付かされる。
なぜ彼が突然、多田の前に現れたのかは不明だが^^;
誰かを思いきり愛したい多田には、格好の相手がその行天となる。
もともと便利屋っていう稼業は、誰かの役に立ちたい仕事だ。
それを全うすることで誰かに感謝され、自分のプライドも満たされ、
達成感を感じる。自分を必要とする存在を肌で確かめるように
コツコツと仕事をこなす多田に、行天はワザと難題を持ち込んで、
彼の心情をかき回す。世の中は思い通りにならないことだらけで、
信じていた相手に裏切られたり、親に虐待や無関心を向けられたり、
自分を絶望化させるには相応しい出来事が数多く起こるが、その
絶望から背を向けてしまうと、それは永遠にトラウマとなって残る。
もしそれらを何らかの形で転化させ、誰かを救うことができたなら、
過去の自分との対峙と未来の成長に繋がるかもしれない。
「俺みたいに誰にも愛されなくても、愛することは出来るんだよ。」
のらりくらりと言葉を交わす行天こそ必死に求めてきたように思う。
多田の過去も、行天の過去も、それぞれに悲しいことこの上ないが、
そこに焦点を集めるのでなく、子供や、風俗嬢や、イカれ親父など、
取り上げる人々がけっこう多彩。身内やゲスト出演?も多い^^;
(弁当屋の南朋、時刻表の麿、ヤクザの高良、ルルとハイシーなど)
おかしなエピソードに半笑いしつつ、血の繋がらない母親の愛には
めっぽう泣ける。ラストの(その後エピソード)写真にはほんわかする。
いい加減なようでいてそうでない生き方は、俗人間をこれでもかと
味わってきたから為せる業なのかもしれない。肝心なところでその
味わいが出せるのがいい俳優だと思うが、優作の息子・龍平には
やはり資質が備わっているように思える。歩き方といい着回しといい、
バカな態度や台詞をとっても、それを演じる上での気構えが伺える。
瑛太とのバランスも間のとり方も絶妙だった。シリーズで観てみたい。
(塾の子供!いいぞ!ある意味準主役だったしな~v成長して下さい)