劇場公開日 2011年4月23日

「愛をあげよう、失くした分だけ。」まほろ駅前多田便利軒 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5愛をあげよう、失くした分だけ。

2011年4月24日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

まほろ、えきまぇ、ただべんりけん♪
と唄うあの予告編を観て、あらら〜やたらと気持ち良さそうな映画だなあと思ってたけど、
やっぱり気持ちいい映画でしたねえ〜。

街の便利屋とその居候兼ね助手(?)が、ちょっとお節介なその性格で、
仕事を請け負った先の人々を少しだけ幸せにしてゆく物語。

この映画の瑛太と松田龍平、2人合わせるとなんだか猛烈にユルい
フィリップ・マーロウ(有名な探偵小説の主人公)みたいだ。
いや、松田龍平がいるんなら『探偵物語』の工藤ちゃんを挙げるべきかな。

この映画は、映画の中に漂う空気がとにかく気持ち良い。
昼下がり、目を瞑って、日の光や風が肌に当たるのを感じながら、
外でぼんやり突っ立っている時のあの心地良さ……。
まあそのものズバリなシーンが何度か劇中に登場するんだが(笑)、
あのふんわりのんびりした空気が、ちゃんとスクリーンの向こうから伝わってくるんです。

それと、魅力的なキャラと、暖かくて何だか笑えるエピソードの数々。
小生意気すぎる小学生・ゆら公、
からっと明るい娼婦ルルとその仕事仲間、
話の分かるクールなヤクザ・ホシくん、
池乃めだかみたいな捨て台詞を吐く激弱シンちゃん(爆)、
その他大勢の、微笑ましく、けどちょっと寂しげなキャラたちが素敵。

そして主人公たち。
ぶっきらぼうで、なんだかんだ言いながらも困っている人を放っておけない多田と、
ほけ〜っとしてて突き放したような物言いもするが、実は誰よりも優しい行天。
傷を抱えた2人だから分かること。
みんな寂しくて、
誰かに必要とされたくて。

愛を失くしたと感じたなら、
愛されてないと感じたなら、
その寂しさを知っているのなら、
せめて人には愛をあげよう。
失くした分だけ、自分が欲しかった分だけ、
ま、とりあえず、手の届く範囲で。

そういや最初に引き合いに出した探偵マーロウがこんな名ゼリフを残している。

しっかりしてなきゃ生きていけない。
優しくなれなければ、生きてる資格が無い。

観終わってから、ふんわり優しい気持ちになれる、愛すべき映画だった。
前の日の仕事から抱えてたムカムカした気持ちがすうっと消えてくのを感じましたよ。
人間、気張らず優しくいれればいいや、なんてね。

ところで瑛太のあの早口のセリフ——
「誰の真似でもない正直な気持ちだ」
他のお客さんがいなかったらひとりで爆笑してたな。

<2011/4/23鑑賞>

浮遊きびなご