玄牝 げんぴんのレビュー・感想・評価
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これはドキュメンタリーなのか?
かなり吉村さん目線で撮影されている。
産婦人科医として働いているところがほぼ映ってないのですが、出産時も助産師任せで見ているだけですか?
その癖偉そうに妊婦さんに説法のを解いていて(しかも自然であるがために子供が危険に晒されて死んでしまってもそれはそれ、のような考え方)それに有り難そうに頷き涙する妊婦と家族がカルト宗教のようだ。
旦那が3ヶ月で失踪した妊婦が泣く姿を執拗に追うのも悪趣味で、出産後旦那が戻ってきたと思ったら前歯がなくてもう、色々お察ししますという感じ...。
これに影響されて危険な出産に挑む妊婦が増えるのかと思うとげんなりする。
実際、救急車が高頻度で来ていたと言うがその辺はなぜ撮影されないのか。成功した出産しか撮影しないのはなぜなのか疑問だらけです。
自然出産素晴らしい、と思って撮影されたのでしょうが
カルト宗教、オカルト、そんな言葉しか浮かびません。
本質的にはドキュメンタリーでこその監督
この監督さんの本質は、物語を構築するストーリー性の有る劇映画よりも、自分の感じるままに突き進む、この作品の様なドキュメンタリーにこそ向いているのではないかと思っている。
自然分娩を提唱する吉村正医院に集った妊婦さん達。此処へ訪れた多くの妊婦さん達が出産への不安を抱えながらやって来る。それぞれの思いを語る中には、旦那さんに逃げられてしまった妊婦さんも居り。その後のエピソードも描かれている。
多くの女性が経験する妊娠・出産とゆう、《命》とゆうバトンの受け渡し。吉村医師が言う「文化の異常…」に対するアンチテーゼを検証している様に見えた…始めの内は。
「でもこれって宣伝にしか見えないのでは…」
段々とそんな風に感じていた矢先に、映画は監督の感性がピピッと反応するかの様に、この医院にうつすらと漂う医師・助産婦さん・患者さん、それぞれの微妙なすれ違いを読み取り始める。
最終的には患者さん達全員を、安産へと導いて行く過程は同じなのだが。助産婦さん達は「先生は我々の意見を完全には汲み取ってはくれない…」。「独特の雰囲気に、妊婦だった妹は此処での出産を辞めた…」等の意見が出て来る。更には「個人個人で違った運動の在り方が在る筈なのに、全員が同じ様なルーティンになってしまっている…」等々。
おそらく女性として、そして第三者の目線として、監督自らが感じた疑問を直接ぶつけたからこそ。最後の最後に吉村医師の家庭内の出来事や医師本人の、「死ぬ事だって有る!」と普段は語りながらも、本当は患者さんの大事な生死を預かる事の不安感を、常に抱いている本音を引き出している。その事実が、この作品を傑作にまで引き揚げる事に成功しているのだと思える。
(2010年11月21日ユーロスペース/シアター1)
2010年最高の作品でした
2010年観た中では最高の作品だと思います。
映画なのだから虚構があって当たり前。
嘘で嘘を塗り固め、歯に布着せて覆いかぶせることで極限までの美しさをたたえることに奏功した古典・名作。
愛や恋でいきつく暇も与えず、終わってみたらお涙ちょうだいだらけのラブストーリー。
ありもしない宇宙人やら幽霊やら亡霊をこれでもかこれでもかと出現させ、おどろおどろしさ全開で逃げまくるホラー。
つまらない嘘をタペストリーにして巧みにスライドさせ、そのはざまでうごめく真実をちらちらと垣間見せる、ひとひねりした心理ドラマ。
などなど、
みんなとっても大好きなジャンルだし、多くの感動をいただけたし、何回観ても泣いてしまう、単純極まりない僕なのですが…。
この映画いつもながらの河瀬作品で、全編これ事実!!!
ドキュメンタリーなのだから当たり前といえば当たり前なのですが、淡々と事実を映し、撮っていっています。
めくるめく現れる妊婦の方々の、みなさん笑顔また笑顔、その笑顔を心より愛おしんでいる吉村先生。
すべての出演者が真実を伝えているとはいいません。臨月ま近で苦しいお腹をこらえての作り笑顔もあったでしょうし、病魔に苦しんでいる吉村先生もその痛みを表面に出すことはありません。
事実の淡々とした羅列の連綿、にちらりとのぞかせる吉村先生と娘さんの相克、ご主人に逃げられ孤独な想いを湛えてお産村で出産を迎える若い妊婦さんの悲しげな独白(なんとストーリー中に新たな展開が!)、…。
事実が本心からなのかそうでないのか、虚構の予定調和の連鎖なのか、映画を観ている最中は、よくわからないまま、淡々とシーンがうつろいでゆきました。
そしてラスト、スタート直後に出現したコケティッシュで活動的なヤンママ妊婦さんが再登場、お産を迎え、…。
みんなきれいに河瀬監督にだまされていたことに気がつきます。
完成された、ドキュメンタリー「映画」です。
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