毎日かあさん : 映画評論・批評
2011年2月1日更新
2011年2月5日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
妻・母親の目線で描いた西原一家の温かい日常
西原理恵子の代表作で一話完結のエッセイ漫画「毎日かあさん」の映画化である。原作は、本音をシンプルかつダイナミックに描きながら、繊細な叙情性があって、グワッと胸ぐらをつかまれるような気がするのだが、そんな読後感が映画でもうまく生きている。これまでに映画化された西原作品の「女の子ものがたり」や「パーマネント野ばら」にはストーリーがあったが、本作は原作のエッセンスを抽出して、6歳の息子と4歳の娘に振り回される漫画家の日常をうまくストーリー化している。元夫で戦場カメラマンだった鴨志田穣の原作を映画化した東陽一監督の「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」が鴨志田目線だとすれば、こちらは西原目線で子供のエピソードが大きくなった。
小林聖太郎監督の演出はどこまでもカラリとしていて、毒のある言葉とブラックな笑いが利いているのだが、だからこそ後半でホロッとさせられる。一家の大黒柱であるサイバラが、いいことも悪いことも受け入れて、ママ友たちと笑い飛ばすエネルギーは母親の包容力そのもの。こんな家族や母親がいてもいいのではないかと、温かい気持になった。小泉今日子の存在感がサイバラ役にぴったりで、たくましい〈かあさん〉になっていた。久しぶりの映画出演になる永瀬正敏はカモシダ役に賭ける意気込みが伝わってきた。柴田理恵や鈴木砂羽らが演じるママ友が、いい隠し味になっている。
(おかむら良)