「【”今日はお祭りの日ですが、貴方がいないので何の情緒もありません。”今作は、戦闘シーン無き強烈な反戦映画でありつつ、後半はユーモラスな雰囲気も絡ませた戦争で傷ついた男女の再生の物語でもある。】」一枚のハガキ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”今日はお祭りの日ですが、貴方がいないので何の情緒もありません。”今作は、戦闘シーン無き強烈な反戦映画でありつつ、後半はユーモラスな雰囲気も絡ませた戦争で傷ついた男女の再生の物語でもある。】
■戦争末期に召集された100人の中年兵たちが清掃の任務を終え、体育館に座っている。 そして、上官により60名がフィリピン行きを、30名が潜水艦行きを、そして10名が宝塚の清掃業務を命じられる。まるで、くじを引くかのように。
各自の赴く戦地の振り分けがなされた晩、フィリピン行きが決まった森川定造(六平直政)は、妻・友子(大竹しのぶ)から送られてきた1枚のはがき(文面は、”今日はお祭りの日ですが、貴方がいないので何の情緒もありません。”とだけ書いてある。)を松山啓太(豊川悦司)に託し、戦後もし君が生き残ったら、これを妻に手渡してほしいと頼み込む。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・この作品には、戦闘シーンは一切出て来ない。だが、前半の森川定造が出征し、”英霊”と書かれたモノが入っている木箱の中が、届けられるシーンと、次に定造の弟三平(大地泰仁)が友子の夫になったと思ったら、赤紙が来て出征し、あっと言う間に木箱が帰って来るシーンを、ボロイ森川家を固定カメラで俯瞰で撮ったショットが実にシニカルな反戦メッセージとして感じられる。
・三平戦死後に、父(柄本明)は、心臓発作で突然死に、母(倍賞美津子)は、友子にコッソリ貯めていた60円が入った入れ物を示して、縊死する。
前半は、展開が暗いのである。
・だが、戦中に手紙を書かなかった松山が、自宅に戻ると嫁(川上麻衣子)と父(津川雅彦)が良い仲になっておりいなくなっているという辺りから、コミカル要素が漂い始めるのである。
■松山が友子が書いた1枚のはがきを持って、森川家を訪れて定造から頼まれていた”確かに読んだ。”と言うメッセージを伝えるシーン。
友子は”何故、アンタだけ生きているんじゃ!”と怒鳴るが、直ぐに”くじ運じゃもんね”と言い彼に詫びるシーンから、松山が友子にブラジルに行くと告げると、”逃げるんか!”と言った後に、”私も連れて行ってくれ。”と頼む姿。
それをコッソリ聞いていた友子に好意を持つ村の戦争に行かなかった団長吉五郎(大杉漣)が、ズカズカと入って来て嫌味を言い、松山と吉五郎が取っ組み合いの喧嘩になり、松山が勝った後に、吉五郎が祝言をしようと言って祭りを始めるシーンが、何だか可笑しいのである。
人間の逞しさを描いているようである。
・そして、松山はブラジル行きを止め、定造と三郎の木箱に火を付けた後に、友子が焼酎をぶっかけた所為で、家は全焼してしまうのである。
だが、二人は何故かサッパリした表情になり、松山は友子に結婚してくれ、と頼み燃えカスを整理しながら”ここに麦を植えよう”と告げるのである。
<今作は、戦闘シーン無き強烈な反戦映画でありつつ、後半はユーモラスな雰囲気も絡ませた、戦争で傷ついた男女の再生の物語なのである。>
