「新藤兼人監督に拍手!」一枚のハガキ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新藤兼人監督に拍手!
去年、NHKで「一枚のハガキ」を撮影中の新藤兼人監督の姿を追ったドキュメンタリー番組が放映され、以来ずっと見たいと思っていて、ようやく観る事が出来た。
今年の日本映画のベストワンはもう決まったと思った。
月並みな言葉だが、見事!と言うしかない。
中年兵士・啓太は、上官のくじによって生きて帰って来たが、妻は実父とデキてしまったという事実を知らされる。
「何で戦死しなかった?」
啓太の戦友の妻・友子は、夫とその弟、義父母を相次いで無くし、嫁いだ家に一人留まる。
「戦争を呪ってのたれ死ぬ」
そんな二人が“一枚のハガキ”によって出会い…
新藤監督の演出は静かながら、非常に力強い。
戦争への怒り、愚かさ、残酷さ、自身が体験した胸の内が画面からひしひしと伝わって来る。
これぞ反戦映画。
全てを失った二人だが、それでもたくましく生き抜こうとする。
そんな希望を感じさせるラストは、生命力と魅力的な人間像に満ち溢れている。
その姿は東日本大震災で傷を負った人々への何よりのエールだろう。
奇しくも僕は福島に住んでおり、今年、この映画を見れた事に何か意義を感じずにいられなかった。
新藤兼人監督の素晴らしい人間賛歌!
先日、本作品は来年の米アカデミー賞外国語映画賞への出品が決まった。
受賞は間違いないと確信しているが、是非とも世界の人々に新藤監督のメッセージを感じ取って欲しい。
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