劇場公開日 2011年8月6日

  • 予告編を見る

「新藤兼人監督に拍手!」一枚のハガキ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0新藤兼人監督に拍手!

2011年9月17日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

去年、NHKで「一枚のハガキ」を撮影中の新藤兼人監督の姿を追ったドキュメンタリー番組が放映され、以来ずっと見たいと思っていて、ようやく観る事が出来た。

今年の日本映画のベストワンはもう決まったと思った。
月並みな言葉だが、見事!と言うしかない。

中年兵士・啓太は、上官のくじによって生きて帰って来たが、妻は実父とデキてしまったという事実を知らされる。
「何で戦死しなかった?」

啓太の戦友の妻・友子は、夫とその弟、義父母を相次いで無くし、嫁いだ家に一人留まる。
「戦争を呪ってのたれ死ぬ」

そんな二人が“一枚のハガキ”によって出会い…

新藤監督の演出は静かながら、非常に力強い。
戦争への怒り、愚かさ、残酷さ、自身が体験した胸の内が画面からひしひしと伝わって来る。
これぞ反戦映画。

全てを失った二人だが、それでもたくましく生き抜こうとする。
そんな希望を感じさせるラストは、生命力と魅力的な人間像に満ち溢れている。

その姿は東日本大震災で傷を負った人々への何よりのエールだろう。

奇しくも僕は福島に住んでおり、今年、この映画を見れた事に何か意義を感じずにいられなかった。

新藤兼人監督の素晴らしい人間賛歌!

先日、本作品は来年の米アカデミー賞外国語映画賞への出品が決まった。
受賞は間違いないと確信しているが、是非とも世界の人々に新藤監督のメッセージを感じ取って欲しい。

近大