劇場公開日 2010年11月20日

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「見るたびに発見のある、男にもぜひ見て欲しい映画」レオニー 猫と海さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0見るたびに発見のある、男にもぜひ見て欲しい映画

2010年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

泣ける

知的

幸せ

世界的に有名な日本人とアメリカ人のハーフの彫刻家、イサム・ノグチの母親を描いた映画。
ならば女性向き、と思われるかもしれない。だが、そんな狭い世界観の映画ではない。

僕は自分と母との関係を考えたし、
一緒に見た女友達は、女としての母を思ったという。
「興味ないんだけど」としぶしぶついてきた男友達は、
自分の恋人とのことを考えたという。
そして教師をしている別の友人は、ひとを育てること、
それは時には導く者の信念と強引な力が必要なんだとあらためて思った、という。

優れた映画は世にあまたあるけれど、
ひとつだけ共通する黄金ルールを言わせてもらえるなら、
それは「見るたびに、違う発見がある」作品であること。

僕は試写会と、劇場で2回見る機会があった。
2回とも、違う発見があった。

こんなにあらゆる面で恵まれた映画もそうない。
役者も、スタッフも(米アカデミー賞受賞者と仏セザール賞受賞者がいる)、
脚本も、そしてロケ地の美しい映像も。。。

役者たちは、それぞれの役を自然に演じているし、
なかでもエミリー・モーティマは、
素顔の舞台挨拶を皇后様がご覧になった試写会で見たけれど、
今風の若い女性なのに、映画のなかでは、
なんと表情豊かに若いレオニーから晩年のレオニーまで、
本当にこういう人物だったのだろうと納得させてくれるほど、
素晴らしい。脇役もそれぞれ生き生きしている。
個人的にはアメリカの学校にひとりぼっちで行ったイサム役の子どもに、
なんだか胸が締め付けられる思いがした。

監督は日本人の松井久子氏。
50歳になってから映画監督をはじめた異端者だ。
経歴を見れば、異端者ぶりは、筋金入りである。

これまでの作品「ユキエ」「折り梅」では、
大手の映画会社や資本からは見向きもされず、
しかし、観た人の口コミで全国で自主上映会が催されて、
これまでに100万人も動員したとか。

そして今回の「レオニー」も大手には見向きもされなかった。
けれど、自分で、そして監督の心意気を汲んだサポーターたちの力で、
資金を集めて、7年間かけて実現した映画だそうだ。

だからなのだろうか、見る者にこびない、
おもねらない、潔い、爽やかな、
きりっとした風が作品のなかを吹き抜けるようだ。

DVD化を待たずに、ぜひ大画面の映画館で観て欲しい。
「夢は絶対にあきらめてはいけない」
映画のキャッチフレーズは、全編にみなぎっている。

猫と海