ヘヴンズ ストーリーのレビュー・感想・評価
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物語が一つのまとまりを見せて動き出すのは第4章から。サトは何でこん...
物語が一つのまとまりを見せて動き出すのは第4章から。サトは何でこんなストーカー行為してんのかと思っていたらトモキを焚きつけるのが目的だった。1章でオシッコ漏らしてたのはそういう意味か、幼い心の中で復讐しようとする気持ちがあったのだ。
自分の復讐相手は既に自殺しているからTVで見たトモキの復讐を手伝おうとする。復讐する方とその相手のどちらをも監視していた。
抜け殻を虫の死体と呼ぶハルキの父は復讐代行業。巡り巡ってこのハルキの父の持つ拳銃が新たに生まれてしまった復讐劇に使われることになる。ここにも奇妙な縁がある。
見知らぬ他人に理由なき殺人をしたミツオに見知らぬ人から向けられる銃口。金よこせとか場当たりで意味もなく発射された銃弾。これが引き継がれて、今度は理由ある殺人に使われる。
愛と憎しみと罪と罰と。死と生。この世とあの世。
テーマが多くてまとめられるものではないけど、映画の中での関係性で誰が誰を思うという事の変遷、心の拠り所の話ではないかと思った。
サト→家族→トモキ
トモキ→家族→復讐→新しい家族、ここにサト→復讐
恭子→ミツオ
ミツオ→恭子→復讐
人は心の拠り所を失くしては生きていけないということを思った。
罪と罰
社会が目を背けたくなる、背け続けているセンシティブな内容でしたが、結論として人を殺してはいけない論理的な理由が示されている様に感じました。復讐は連鎖し続け生き残った者に苦しみを与え続けるだけなのではないかと。殺すことや憎しみは、救いにならないのではないかと。
それは国内の殺人事件だけに限らず、世界的な戦争や紛争の事とも繋がる、作品からそんな世界観を感じました。
復讐の連鎖
・第1章 夏空とオシッコ
8歳のサト。友だちに海に突き落とされるという衝撃のシーンから。サトは両親と姉を殺され、祖父ソウイチ(柄本明)に引き取られることになったのだ。その道中、高層住宅街でソウイチが薬を買いに行っている間にサトがいなくなってしまう。折しも、光市母子殺害事件をモチーフにした事件で犯人を殺してやりたいと訴える夫のトモキの姿がテレビに映し出され、サトは殺したい相手が自殺したため自分は長生きすることを誓うのだった。
・第2章 桜と雪だるま
妻子を殺害された男トモキ(長谷川)が桜の木を切って倒れた。花見の宴席でそんな光景を見た警官のカイジマ(村上淳)。彼の裏稼業は復讐代行業。雪深い廃墟での波田(佐藤浩市)とのやりとりが面白い。また桜吹雪の町、女に向かってカイジマの過去が語られる。拳銃強盗しようとした男を撃ってしまったこと。なぜか息子に雪だるまをおみやげとして渡す・・・
・第3章 雨粒とRock
難聴のギタリスト・タエ(菜葉菜)。彼氏が女を連れ込んだため、カギを付け替えるため鍵屋のトモキを呼んだ。寂しさを紛らわせるため、レイプされたと偽ってトモキをライブ会場まで来させ、感動させる場所に連れてってくれと頼む。暗い影を引きずるトモキに惹かれていくタエ。しかし、ここでは無理にキスしただけで、進展しない・・・
・第4章 船とチャリとセミのぬけ殻
ある船着き場に16歳になったサトがやってきた。セミの抜け殻を虫の死体と呼ぶ少年がいた。少年の自転車を借り、自分の“ヒーロー”を探しだした。トモキの捨てたゴミ袋からタバコの吸殻を取りだし咥えて寝そべるサト。自転車の少年はカイジマの息子ハルキ。人から金を盗もうとしたりして、小学生なのにグレていた・・・
トモキはタエと結婚し、一人の娘をもうけていた。そんな彼に犯人の少年が出所したことを伝えたサト。すっかり大人になり、小さな幸せを掴んでいた矢先のことだった。
・第5章 おち葉と人形
人形作家の恭子(山崎ハコ)は若年性アルツハイマーと診断された。ある日、恭子は病院のテレビで理由なき殺人を犯した少年の言葉を知る。「これから生まれてくる人間にも僕のことを覚えていてほしい」。少年に面会を求め、やがて手紙のやりとりが許された。そして、面会した恭子。少年ミツオ(忍成修吾)が出所すると、彼を養子にして、自分の介護を彼にまかせる恭子であった・・・
・第6章 クリスマス☆プレゼント
カイジマは死なせてしまった強盗の遺族チホ(根岸季衣)に毎月金を渡していた。そんなことに金を使っていたものだから、またしても盗みを働き怪我をしたハルキ。一方、トモキとサトは頻繁に接触。サトは学校でもいじめられ、精神的に生きる希望をトモキに託していたようだ。そしてミツオとの最初の接触。あやまりにも来ないミツオをなじるトモキであったが何もできずにいた。ミツオはミツオで、建築現場で金銭的に虐げられていたようだ・・・
・第7章 空にいちばん近い町1 復讐
恭子の故郷の病院に連れていったミツオ。復讐の時は近いはずなのに、ミツオを追い回して捕まえて、どうすることもできない。そして恭子はトモキがビニール袋を被せたために死なせてしまい、一つの男の死体が発見される。
・第8章 空にいちばん近い町2 復讐の復讐は何?
トモキが壊れたと言って妻のタエと娘は出ていく。ミツオは恭子さんを殺されたことで逆にトモキに復讐しようとする。チホの娘であるカナ(江口のりこ)が死んだカイジマの家を訪れて、偶然にも拳銃を手に入れたものだから、それがミツオの手に渡り、血みどろの決闘となってしまったのだ。
・第9章 ヘヴンズ・ストーリー
チホは無事に子供を産んで、サトは母の手紙にあった住所を訪ねる旅に出た。バスを降りた丘には死んだ者ばかり。お面を被った舞台が幻想的に表現されていたが、その親子はサトの家族だった。
復讐の連鎖を断ち切るというテーマだけではなく、多くの俳優を使って、人間がどこかで繋がっている奇縁をも盛り込んであった。殺された者、その遺族。その痛みは当事者じゃなきゃわからないと思う。利己的であり、共感できる人間はほとんどいないのもすごいことだ。
救いのない悲劇を長々と…とにかく耐える
率直に話が悲惨すぎていやーな感じ。映像も、意図的何だろうけれど、あまりに粗すぎると感じたし、たくさん出てくる主要な人物キャラもことごとく好きになれないし、そして長いし…でも、不思議と興味がつきなかったし、4時間超を一気に完走できた。その要因は、物語の複雑な絡み合いが巧みだったと勝手に分析するところ。
扱っている事柄がほとんど犯罪めいたものばかりなので、必然的に内容も嫌な感じになるのは仕方ないかもしれない。でも、最後の幻想的な語り口が、個人的には納得できかねた。そこに向かって物語が集約していたのかなと感じると、何だか、無駄な時間を耐え抜いてしまった徒労感…結果好きになれなかった作品だが、優れた作品じゃないかなーとは思う。ただ、こだわるところはもっと徹底して作り込んで欲しかったというのが、勝手な願望。
非常に長くて、結構耐え抜いた感はあるけれど、尺自体には不満はない。嫌なストーリーもしかり。最大の不満は映像そのもの。作品の意図するところを映像そのものでもっと明確に表現してほしかったなーというのが身勝手でさらに無理難題を押しつけるような願望だったりする。
その先
幾つかのショートストーリー的短編が重なり合うオムニバス又は群像的構成方法で展開す長編ストーリー。通常ならば4つ位の物語なのだろうが、今まで観たことがないほどの多さの数である。主軸は家族を殺された男と女の子なのだろうが、そこに行き着く迄の犯人やサイドストーリーもきちんと描かれている。そういう意味では希有な作品なのだと実感する。映画館では相当の疲労感が予想されるが、DVDだと自分のペースで観れるので負担は少ない。そういう観方だとやや引いた目線で冷静に思考することもできる。良質の文学を映像化したような感想を抱く。明確な主張もなければ、腑に落ちるカタルシスも得ることはない。それは観客それぞれが考え、心に残すものなのだろう。人生には色々な出来事が突然訪れるが、そこに果敢に挑む登場人物達に生きる強さを否応なしに叩き付けられた作品である。
復讐の復讐は何を生むのでしょう。
とにかく、長い…。
こんなに長い作品は久しぶりです。
内容が深いのは分かりますが、ここまで長くしなくても良かったのではないでしょうか?
この作品は、少年に妻と娘を殺された夫が復讐を誓う物語。
様々な登場人物との絡みがある中で、犯人の苦悩と残された夫の苦悩、また別の一家殺害事件で一人残された少女の苦悩が、複雑に交わりながら描かれています。
法によって裁かれるだけでは納得できない遺族の思いに、共感してしまう自分がいました。
四季折々
すごい映画だ。映画に食べられたような感覚だった。たくさんの登場人物が絡み合い、憎しみ合い、愛し合い、殺し合い、空に1番近い街に踏み込もうとする。ラストのサトのアップショットには本当に鳥肌が立った。てか何回か鳥肌立った。そしてエンディング曲がめたんこ良い。
喪失と再生の物語
普通の映画の倍ほど長さの作品ですが、
その長さを感じさせないほどの力がある作品です。
殺人事件で家族を失った一人の少女の苦悩と再生までの道程が
中心となるストーリーで、そこに同じような境遇の登場人物達が
複雑に絡んで行きます。
それぞれに何らかの原因で平穏な人生を狂わされた、または、
平穏な人生を送ることが出来ない(許されない)人々。
彼らに心の平穏が訪れることは決してないように見えます。
復讐は復讐しか生まない、負の思考は負の連鎖しか生まない。
人間の業とはこんなにも深く悲しいものなのか。
長尺というだけで敷居が高く感じますが、
是非、一度は観てもらいたい作品だと思います。
家族を殺された者の哀しみと希望……
「告白」や「悪人」と同様、本作でも“家族を殺された者の哀しみ”や“人間の運命的なつながり”、“大切な人への熱い想い”が丁寧に描かれている。ただし、本作では第9章(最終章)である種の「希望」を提示する。それは死者と生者との「つながり」だ。
「私が殺したい犯人はもうこの世にはいない」。家族を殺され、その犯人が自殺してしまった。そんなサトには生きる意味はないのか。恐らくサトはこう問い続けていたに違いない。しかし、ラストの人形芝居を演じていたのは死んだ両親と姉だった。抱き合う母娘。そしてサトは走り出す。サトはこの後も生きてゆくだろうと確信できる美しく、哀しい終幕であった。
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