「生への執念が薄いVFX大作」TSUNAMI ツナミ 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
生への執念が薄いVFX大作
ネタばれというか、酷評です。
映画が気に入ってる方は読まずにスッ飛ばしてください。
この映画、前半のドラマがとにかく退屈。
ベタなメロドラマ、ベタな笑い、そして、過剰にベタなキャラクター。
津波の話はたま〜に少し挟まれる程度で、いったい僕は何の映画を観に来たんだっけ?と何度も自問自答。実はこれは笑えない吉本新喜劇か何かなんじゃないかと思いながら観ていた。
……ソル・ギョングさん、こんな所で何やってるんすか。良い役者さんが勿体無い。
で、後半の津波襲来シーン。
似たような映像は『デイ・アフター・トゥモロー』や『2046』で観ているが、それでも街が津波に飲み込まれていくCGの迫力はなかなか。
鉄橋の上でのアクションシーンなんてどれも新鮮で良かった。冠水した路上に変圧器が落ちるシーンもオッソロシイ。
そんな風に、満を持しての災害シーンは、次から次に危険な事が起こって飽きさせない。
まあ『飽きない』と『よく出来てる』はイコールな言葉じゃない訳で。
だって、一番大丈夫そうな人が溺れ死にそうになったり、ああ死んでしまったと思ったらしょうもない助かり方をしたり、助かったと思ったらやっぱり駄目だったり、なんか危ないのか危なくないのか良く分からないシーンが多い。
だいたい津波の第2波の方が明らかに危険そうだったのに、そこは完全スルーなんですね(笑)。
それに、やけにあっさり「もう駄目だ、さようなら!」みたいな事言う人ばかりだ……。
みんなカナヅチなのか?
いやカナヅチでもそうでなくても、もっと必死に生きようともがくもんだと思うんだが、生への執念が妙に薄い感じの人達ばかり。
というか『泣かせる為に死ぬ』みたいな役割の人達ばかりだ。
技法的に優れた映画だろうが何だろうが、登場人物をぞんざいに扱う映画は嫌いだ(地区開発のおじさんだけは飛び抜けて良かったが……)。
ところで近所の映画館では<超>日本語吹替だか何だか言う物しか上映していなかったので、字幕派の僕もそちらを鑑賞。とはいえ上手い吹替だったのでそこは安心。
しかし驚いたのは、吹替版の監修が大森一樹と川北紘一だったこと。平成ゴジラシリーズを支えた偉人の方々じゃないですか!!
確かに群集パニックシーンも多かったが、その辺りの吹替演出に一役買っていたのかも。
だが……映画の中で一番感激したのが、字幕監修の人達の名前を観た時だったって一体……。
<2010/9/25鑑賞>