「掛け合いのトライアングルの面積の広がりこそ三谷ワールドの笑いの醍醐味」ステキな金縛り 全竜さんの映画レビュー(感想・評価)
掛け合いのトライアングルの面積の広がりこそ三谷ワールドの笑いの醍醐味
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幽霊をいかに裁判で証言させるか?
信憑性を持たせるか?
は勿論、
実体を観られる人と観られない人との違いとは?etc.etc.数多い疑問点へ1つ1つ答えるきめ細かな論述は、法廷ドラマの緊迫感を損なわずに笑わせる効果を持たせている。
終始、大ざっぱで乗り切った『サラリーマンNEO』とはエラい違いである。
また、『有頂天ホテル』の娼婦(篠原涼子)や、『マジックアワー』の売れない俳優(佐藤浩市)etc.過去の作品群とキャラがリンクしているのも興味深い。
三谷作品の最も笑いの核である会話劇において、幽霊本人と見える側との掛け合いだけで成立していない点に、今作の繊細さが象徴していると思う。
検事の中井貴一のような幽霊否定派・見えない側が加わり、三角形でキャッチボールする事で笑いのシチュエーションが発生し、盛り上がるに連れて、三角形の面積がどんどん拡大していく。
そんなスケール感が人間の生と死の境界線まで波及するから、客も「どうなるんやろ?」とハラハラ感じ取りながら、笑う事で劇場全体が魅力を共有化できる。
コメディ映画を楽しむ基本の中の基本が分厚い層を成す。
ただ、丁寧に積み重ねている代償として、長いね…。
豪華なのは嬉しいが、このボリュームやと胃モタレする。
あと、生死の扱いが軽んじていく展開もブラックな不意打ち要素が濃く、笑うのに戸惑ってしまう要因の1つに感じた。
その戸惑わせる設定がやがて事件解決の鍵だけでなく、死後の世界を把握する大きな分岐点となっていくので、いかに直ぐ受け入れるかで評価点が決まるのではないだろうか。
では、最後に短歌を一首。
『ホシ浮かぶ 裁き跨(またが)る 武者震ゐ 息吹き返し 真実の声』
by全竜
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