「恋バナに 国境なし。 女たちは意気投合で愉快に笑う。」ジュリエットからの手紙 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
恋バナに 国境なし。 女たちは意気投合で愉快に笑う。
ここのところ「手紙」に関する作品や「郵便配達人」の映画をシリーズでチョイスしている僕。
ロミオとジュリエットの舞台、
愛の街、ヴェローナ。
トスカーナは、黄色い陽光がキラキラ輝く土地。
返信の代筆にいそしむイタリア・ヴェローナの女性たち=「ジュリエットの秘書」たちと、米国人ソフィーの旅先での出会いの物語だ。
手紙執筆の担当は
・夫問題や、結婚への質問を引き受けるのはドナテッラ
・病気や喪失担当のフランチェスカは看護師さん
・マリアは大家族ゆえのオールマイティ
・イザベラは恋愛の悲劇の訴えに返事を書く。
この分担作業で、世界中から訪れる女性たちの残した《絵馬》に、彼女たちがジュリエットになり代わって、返信をするわけだ。
(サンタさんからの手紙と同じシステムのようですね) 。
イタリアと、アメリカと、英国の、お国柄の違いで物語はぐいぐいと進行します。三つの国の三つの国民性、 そして三者三様の情の厚さが、ストーリーに良い変化を付ける。
でも「恋バナ」などには鼻っから関心がなく、むしろ女たちの“愚にもつかないお喋り”を毛嫌いする孫息子の登場も、スパイスとして効いていて、えらく笑わせてくれる。
旅のおもしろさとは、こうした人と人との出会いでしょう。
旅のお土産は、思いもかけなかった現地の人との親交やコミュニケーションにあると思うのです。
フィアンセのヴィクターが、NYでの開業に向けて心血のぜんぶを注ぐのは仕方ない。
僕は彼の味方だ。
でも、
イタリア現地でのレストラン業のビジネス交渉と、ソフィーとのハネムーンを抱き合わせにするのはドケチです。 ❌️ バツですよね。
どうしてもイタリアに行きたかったのであればヴィクターは出直さなくちゃあ。
シェフとしてはあの輩はイタリアかぶれしているのに、あの男は残念ながらハートはイタリア男になりきれなかったってこと。
ま、
世の男たちの常識的考えとしては
350年前のシェイクスピアの書いた架空の人物、それも故人のはずのジュリエットさんから返事が来る事とか、考えてみれば馬鹿げた話だし、
そこに夢中になる女たちの様子にも英米の男たち(ヴィクターとチャーリー)は引いたことだろう。
代筆者がタネ明かしで出現して「私が書いたんですよ」と本人を名乗るあり得なさでも、世の女の子たちは失望や怒りどころか偽の代筆者と心打ち解けて大の親友になってしまう。
男たちの拒絶反応は、この女子どもの不思議な生態への訝りもあるでしょう。
でもここはNYではなくイタリアです。イタリアで一番大切なのは「共感」と「愛」だったんですよ。
誰にも邪魔をさせない二人だけの時間って、軽んじてはいけません。
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ジュリエットの秘書たちのファッションにもぜひご注目。
僕も、イタリアでは、ふと駅の広場で出会った若い男性と、しばらく立ち話をして語り合った事があった。
内容は (Amor♡の国イタリアには全くふさわしくない無粋な話題だが笑)、 「イタリアも日本も、同じ敗戦国同士で、戦勝国アメリカの軍隊に駐留されている事をキミは信条的にはどう感じているか?」って問い。
それだった(笑)
彼とはハグをして別れたが。
あれはたまたますれ違って協議をした一男友達ではあっても、ソフィーたちの女子会のような「一生のソウルメイト」ではないな。
僕も今度生まれ変わるとしたら、こんな楽しい付き合いもやれる、ちょっと女の子になることにも憧れますね。