「面白いと言い切れないほど心に残る。」マイ・バック・ページ mumuさんの映画レビュー(感想・評価)
面白いと言い切れないほど心に残る。
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遅すぎた、早すぎた、そんなふうに後悔することは人生に何度もある。
過ちを起こしたこともあるし、思い出したくない過去もある。
これはそんな物語だった。
わたしが生まれた年に起こった事件を中心に
なぜこんなことが起きて、どう時代に落とし前をつけたのかが
丁寧に描かれている。
その丁寧な描写が、時代は違っても、誰にでも心当たりのある
後悔の念を思い起こさせ、気持ちをえぐり取られてしまうのだ。
冒頭の、まだ事件を知らない無邪気な沢田役の妻夫木聡の瞳が
なにもかもが中途半端、なのになぜか魅かれる強い瞳を持った梅山に
引きずられるように熱気を帯びていく様子や
「何にもなれなかった自分」や失ったもの、それでも残ったものに気づき
涙を流すシーンなどは非常に見ものである。
松山ケンイチは、理想だけは立派な口先だけの男、梅山の
どこか憎めなさと空虚を上手く演じていた。
そして山下映画といえば個性的な脇役陣。
どの役者の演技も主演の2人を支え世界観を作りあげている。
これが骨太な作品となった理由ではないだろうか。
特に、全共闘の生き残り、唐谷役の長塚圭史登場シーンは鳥肌が立つ。
「面白かった」と言う度に自分の傷をえぐられそうで辛い映画なのに
『あのシーン、誰々出てたよね』というマニア心もくすぐられる
何度でも観たくなる作品だった。
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