「戦争中の少女達がけなげで思わず、涙が・・・」日輪の遺産 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
戦争中の少女達がけなげで思わず、涙が・・・
「夏が来~れば、思い出す~」それは、毎年恒例の夏のイベントと呼ぶのは、おかしいが、敗戦記念日の8月15日に合わせてこの時期は、TV、映画共に、戦争関連の作品が、目白押しになるのですが、戦後66年も経つと、また一段と戦争体験者が減る為に、特にドキュメンタリー作品以外の、ドラマ作品の場合になると、映画俳優及び、スタッフの殆んどが、戦後生まれの為に、何となく映画を見ていても、映画が描き出すその世界観が、「甘いし、リアリティーに欠けてしまうと思い、どん引きしてしまう!」と言ったら失礼だろうか?
子供時代に、両親や、祖父母から毎年浴びるように、戦争体験談を聴かされていたし、当時の新聞記事などを読まされた私には、本作は、綺麗すぎる気がした。
私は子供時代の影響があってかどうか、理由は定かではないが、数年前イラク戦争に参戦した米兵士の聞き取り調査の為に、渡米した経験がある。
戦地と言う現場に於いては、敵を大量殺戮しなければならない、米兵達の苦悩がそこにみてとれた。彼らの緊張感とか、彼らの胸をえぐり取り出される程の苦しみが殺す側にさえ存在していた。しかしこの映画では残念な事に、その様な当時の日本兵の本当の気持ちが全面には、描かれる事が無く、観客の胸に無理矢理短剣を突き刺す様な、衝撃的な戦闘シーンも無ければ、全編に渡り、戦時中という緊張感が得られないのは、残念であった。
しかし、とは言うもののこの作品は、原作が浅田次郎氏であるだけに、先の戦争の善悪や、開戦までの過程の是非を問う様な、戦争を批判して、戦争の無い平和な社会の必要性を訴えているのでは無い点が、やはり素晴らしいと感動するお話であった。
例え、戦争中であろうが、なかろうが兵士である前に、一人の人間として、いかに清く、懸命に、理性を持って生きるか、或いは、兵士に限らず皆、人それぞれの生き様こそ、大切であると、この作品は、教えてくれる事が、何とも素晴らしいと思う。そして、生き残る事の重荷、戦死せずに助かる人の悲哀が、胸に迫ります。八千草薫さんの芝居が素晴らしい!
勤労奉仕として、動員させられる20人の少女達が、けな気で、何とも愛しい。戦争時代は、みんな学生は、軍需工場に駆り出され、勉強どころでは無かったのだから、今は本当にその事を思えば、天国だろう。いくら受験戦争でも、勉強が出来る幸せが今ここには有るのだから。
そして、私達は良くも悪くも、本当に多数の先人の人々の犠牲の上に今日の社会が成立している事をいつでも知る必要が有ると思う。8月だけでは無く、何時でも、自分達ノルーツや、過去を知る事は、大切な事であると思う。そして、今の価値基準だけで、過去の過ちを批判してはいけないと思う。
何時の時代も、善人も、悪人も同居しているのだ。今、私達に求められているのは、「自分は、どんな人間として、この生を全うすれば良いのだろうか?」と言う事ではなかろうか?
千年に一度の震災を経験した日本人は、この先どう生きるのが良いのだろうか?受け継がれて行く私達の、生命と日本文化。この作品を見て、明日の貴方の生き方を模索出来たら、きっと素晴らしい人生の生涯学習をした事と思う。貴方なりの答えをこの映画から見つけ出して欲しい!