「何も知らないで観ていたら、途中まで事実の物語だと勘違いしてしまった。あってもおかしくない話。」日輪の遺産 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
何も知らないで観ていたら、途中まで事実の物語だと勘違いしてしまった。あってもおかしくない話。
真柴近衛師団少佐(堺)は、小泉中尉(福士)、望月軍曹(中村)とともに財宝を隠匿せよという密命を受ける。実労は工場で働いていた12、3歳の女学校の生徒。思想犯として憲兵隊に睨まれていた彼女たちの教師・野口(ユースケサンタマリア)も一緒だ。2.26の亡霊という出で立ちの謎の軍服男からの命令書によって逐一実行されるが、最後にはどうなるのかわからない。3人の軍人たちは、それが日本を救うものだと信じて行動する。なにしろ現在の価値にして200兆円規模の財宝なのだ・・・
終戦前夜、謎の男から最後の命令が下される。運び込みの任務を完遂し、玉音放送を聞いた後で少女達と教師に毒薬を飲ませるというものだった。慌てて阿南大臣(柴俊夫)宅に向う真柴。そこでは自害しつつあった大臣の姿があり、「民間人を殺したくない」とはっきり聞いた真柴。玉音放送を聞いて、少女たちに秘密を保持させるよう説得する・・・が、事態を恐ろしいほど的確に把握していた海軍大佐を父に持つ少女が小泉のカバンから青酸カリを盗み出していたのだ。少女たちは級長の久枝(森迫永依)以外、19名が自殺。かけつけた小泉は苦しんでいる少女たちに銃を撃つ。そして小泉は久枝にも銃口を向けるが望月はそれを阻止。野口は「引率しなければならないから」と言い残して、財宝のある防空壕へ入り拳銃で自殺。
七生報国と書かれた鉢巻も痛々しい軍国主義時代の少女たち。多分反戦思想を持つ教師でさえも死を選ぶ世の中だ。理由も知らされず、任務遂行、秘密保持など、過酷な人生を過ごさねばならなかった時代。何も劇中の少女たちに限ったことではない!とも訴えかけられているような気がしてくる。
冒頭から、マッカーサーの通訳をしていた男(ミッキー・カーティス)や、現在の久枝(八千草薫)の夫である金原庄造(八名信夫)の突然死によって、その家族の姿がメインとなっていたが、麻生久美子と塩谷俊が余計な登場人物に思えてしょうがない。秘密を守るという苦難を強いられたため、望月は久枝の夫となることも重要なところだ。「もう命令は守らなくていい」と庄造が聞こえたことも、テーマとしてはいいのだが、真柴の最期も見せてくれないと家族との繋がりがわからない。もうちょっと脚本を・・・