ルンバ! : 映画評論・批評
2010年7月27日更新
2010年7月31日よりTOHOシネマズシャンテにてロードショー
「映画は身体である」という確信がこの映画からは伝わってくる
映画は身体である。
そんな確信がこの映画からは伝わってくる。いや、でも映画の身体って一体何? とは思われることと思う。しかしそんなものがあるのだ。あるに違いない。それがなければ映画なんて誰も見ない。なんてことさえ無理やり思わされてしまうわけである。
俳優たちの身体と映画の物語とが分かちがたく結びついているということになるのだろうか。その主演俳優たちが監督も兼ねていることが、この映画のポイントである。元々は舞台の道化師だったのだというスッキリとしすぎた彼らの身体の輪郭と、その滑らかでぶれることのないリズミカルで筋の通った動きが、この映画そのものを作り上げる。過剰な美しさとバランスを欠いた可笑しさの響宴といったらいいか。それらを監督でもある自分たちがコントロールしつつ、しかし次第にコントロール不能の地点まで自らを導いていく。
どうしてこんなことが起こるのか、どうしてかれらはそうするのか、理由を考え始めるときりがない。だがそれはそこに彼らの身体があるからだというひとことで解決がついてしまうのである。ルンバという音楽&ダンスを巡って巻き起こる主人公たちのバカバカしくも悲しく愛らしい物語が、きっとすべて彼らの身体に埋め込まれているのだ。キッチュに見えるさまざまな画面効果は、それこそ彼らの身体の中の映画の風景であるだろう。映画の始まりと可能性がそこにある。
(樋口泰人)