「老いてもなおLOVE & HATEを貫く、可愛い“悪妻”の純粋な愛」終着駅 トルストイ最後の旅 めぐ吉さんの映画レビュー(感想・評価)
老いてもなおLOVE & HATEを貫く、可愛い“悪妻”の純粋な愛
クリストファー・プラマーとヘレン・ミレンという、
英国の名優ふたりがトルストイ夫妻を演じる本作。
観る前は、静かで穏やかな「老人映画」を想像していました。
が!!!
まさか、こんなに激しいとは~~~!!
いや、私がトルストイについての知識が乏しすぎたからいけないのです…。
ちょっとでもトルストイについて知識があれば、
晩年のトルストイが思想活動に没頭し、
そしてそんな夫を罵倒し続けた妻ソフィアは、
世界三大悪妻の一人として悪名高いというのは周知の事実でしょう。
しかし、ここで描かれるソフィアは、ただの悪妻ではありません。
むしろ、いつまでも夫を愛し続ける、少女のような可愛い女性。
ま、思いが強すぎて激しすぎる…というのは事実ですけが、、、
そしてトルストイも、潔癖で四角四面な人格者などではなく、
むしろ遊び好きな、話のわかる曲者のじーさん。
ソフィアは、そんな楽しくて遊び人の彼を愛していたのに、
なぜか神のように崇められてしまう夫を
「そんなのちがーーーーーう!!!」と全力で歯向かっていたように見えました。
それは、単に「そんなの間違っている」という思いもあったでしょうし、
単に「自分から離れてしまうのが寂しい」という
ワガママからくる思いもあったでしょう。
ただ、この作品を見ている限り、
トルストイを崇めていた取り巻き(実の娘も含めて)のほうが
計算高く「トルストイを利用しよう」としているように見え、
ソフィアのほうがずっと純粋に夫を想っているように見えます。
トルストイは結局、最後はソフィアのもとを離れて
家を出てしまうのですが、
それにしても、自分の信念のためというよりは、
売り言葉に買い言葉とゆうか
じーさんの癇癪とゆう感じ、、、
まさにLove & Hateのお手本のような二人です。
それでもやはり、息を引き取る間際に呼ぶのはやっぱりソフィア。
本当に信じて、愛していたのはソフィアだけだったのです。
こんな年をとってまで、ここまで激しく愛し続けるなんて、
辛く苦しいけれど、なんてチャーミングで素晴らしいんだろうと
心を打たれ、憧れました。