劇場公開日 2010年6月26日

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ザ・ロードのレビュー・感想・評価

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4.5絶望から希望を見出そうとする、詩のような人類創世の旅

2010年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

まだ21世紀も始まったばっかりなのに、最近、時々世紀末を描いたような映画の公開が目立つ。その世紀末映画のような作品の中には、アイデア倒れに終わっているような内容のものもあるが、この作品は違う。文明が崩壊した地を歩く父と子の道行きというだけの物語が描かれるこの作品は、人間本来の生き方など、さまざまなことを考えさせられる、内容の濃いものだ。  ある日突然、地球になんらかの大変動が起き、大部分の人類が失われね地球上の文明のすべてがなくなってしまう。その中で、都会から離れた地に暮らしていた夫婦が、世界から取り残されるように生き残る。そんな絶望の時代に、男の子が生まれる。物語は、妻が死を選んだあと暖かさを求めて親子が旅立ったところから始まる。  絶望の世界しか知らない息子と明日の希望を息子に託す父親との会話には、現状の恐怖感と、まだ温かい人の温もりがあった昔話しかない。その中で、父親は息子に「善き人になれ」としきりに諭す。人肉を食うしか生きられない餓鬼のような者たちや、人心を信じられない現状の中で、その不毛とも思える親子の会話は、映画の中で詩を朗読するかのように館内に響き渡る。  そのせいなのか、親子の会話は映画を見ている者の心に、物語が進むにつれてジワリと染みわたる。  この映画の原作は、「ノー・カントリー」を書いたコーミック・マッカーシーで、昨年発売されたときに、書評家たちの絶賛を浴びていたこともあって、映画化されたことは前から気になっていた。その漠然とした期待感は全て満たされ、観終わったあとには、何か大事なものを見出したような、いい気分が味わえるのがこの作品の良さだと思う。それはこの作品が、人間はどのように生きるべきかを考え、絶望から何を見つけるのかを指し示してくれているからだ。内容が暗いので、本来は落ち込んだときには勧めないものかもしれないが、私はあえて、落ち込んだときにこの作品を見てみるべきだと思う。現代人の絶望感を集約し、先が見えない現代に生きる者だからこそ、この作品は見る価値があるのだ。  ちなみに、私は教育についても考えさせられた。「善き人」へと向かいたいのに、人を見抜く目が失われている父親から「善き人」が見られない。子どもを教える側と教えられる側の隔たりをどのように埋められるのか、は文明のあるなしにかかわらず、人を善い方向に導く重要な問題であることを、この作品からあらためて感じた。  ラストは、観る人によってさまざまな見方はあるかと思うが、私は息子の存在が新しい世界のエホバやキリストになるように感じた。新しい人類創世の旅が、ラストシーンから始まるような気がする、深い内容のこの作品は、公開館は少ないようだが、見逃せないものだと思う。

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こもねこ