「何かに突出した映画はそれだけで素晴らしい」キック・アス kakao_2rises4さんの映画レビュー(感想・評価)
何かに突出した映画はそれだけで素晴らしい
まず前評判通りクロエ・グレース・モレッツは凄かった。引くぐらい凄かった。ノースタントであれだけこなせる子役は少ないのではないだろうか。ノースタントだから映像からも迫力が伝わってきたし、スピード感もあってアクションは観ていて本当に楽しかった。アクションシーンとモレッツについては全てが最高の質に仕上がっていると言っていい。アーロン・ジョンソンもそれなりによくやっているし、しっかりヘナチョコに見えるって点が評価できる。
また、物語設定が奇抜なのもこの作品の魅力である。キック・アスは基本ダメ人間っぷりを発揮する一般人で我々に近い存在で共感できる。ヒット・ガールとビック・ダディも何の能力も持たないが常識的におかしくぶっ飛んでるキャラクター。これもぶっ飛び具合が面白い。アクションは全て強烈で人体切断や血が飛び散るなど結構エグイが、ある意味中途半端には見せていない。
そして普遍的なテーマもしっかり織り込まれるので魅力をアクションだけに絞らせない。主人公が我々に近い存在なので主人公が抱く疑問は、そのまま実世界への問いかけになっている。さらにこの映画は殆どのセリフがユニーク。特にヒット・ガールとビック・ダディの会話シーンは、飽きを全く感じさせない。有名アメコミヒーローのオマージュも数多く入っているからそれらを観ているとより楽しめる。キック・アスがヒーローとしての自覚を取り戻すシーンでのセリフは、名セリフの一つであるとともにスパイダーマンへのオマージュでもある。終始面白いし、単純なB級映画とは感じさせないところがまた良い。
ちなみに音楽表現も非常に巧みで、キャラクターの心情や観客に向けたメッセージなどを音楽に乗せている。例えばヒット・ガールに対する批判を監督もある程度予測していたのか、終盤のアクションシーンでの曲で開き直りを表現している。この手法は結構好き。心の底から楽しんだ。