「そこはやっぱり、いらんがな」SP 革命篇 ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
そこはやっぱり、いらんがな
深夜ドラマ枠としては、驚異の視聴率を叩き出したTVドラマ「SP」を、キャスト、スタッフをそのままに映画化したシリーズ完結編。
本作の大きな見所であるキャスト自身がほぼ、スタント無しにこなすアクションシーンが、効果的に活かされている。観客を約2時間半、飽きさせる事無く物語に引っ張り込んでいく堅実な演出は、見事の一言である。
ダブル主演をこなす岡田、堤ご両人も、程よく年輪を重ねた男の醸し出すダンディな魅力、色っぽさを存分に撒き散らし、女性陣が本作に求める美しさを作り出す。男性も魅了される格好良さもまた良し。
だが、だがである。本作には目を背けられない違和感が、ある。
無駄が、多い。美しさ、格好良さでは拭いきれない無駄の存在感が、強すぎる。
綿密にシミュレーションを重ねた物語であることは、十分に理解できる。リアルを追い求める作り手の執念は評価できる、だが、その検証の内容を細部にわたって、事細かに台詞にぶち込んでしまっているので、本作の魅力であるスピード感が、損なわれている。果たして、前半部分の大半を埋めるのが、作戦全般の説明台詞で良いのか。観ているうちに、本作を
「国会議事堂は、こうやって占拠しましょう!」
とでも名付けられたドキュメンタリー番組を勘違いさせられる感があるのは否めない。多少端折っても、アクションシーンをより盛り込んでいく姿勢が必要ではなかったのか。
極めつけは、波岡をはじめとした官僚方の内輪話のくだり。物語の随所に持ち込まれ、とりわけ必要の無い政治批判を軽く、軽く語る。これまで大事に使われる場面だから、重要な役割があるかと我慢していても、結局何の意味も無い。ただ、くっちゃべっているだけである。必要があるなら理解できるが・・・これでは「いらんがな、ここ」である。
人生、無駄なものなんてないと言われるが、余分な言葉も、説明も、映画作品には無駄である。ひたすら、無駄である。
続編の存在も軽く匂わせてくれる本作。TVシリーズから語り過ぎが異様に鼻に付く金城先生を脚本協力あたりにまわして、本作のスピード感を重視させるなどの改善が必要になってくるだろう。
兎にも角にも、作品自体は観客を満足させる魅力をもつ本作。観客の求めるものをさらに、熟考してほしい。心より、期待している。