「人を裁くということ」BOX 袴田事件 命とは kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
人を裁くということ
主任裁判官に選ばれた熊本典道(萩原)。他の二人の判事、裁判長(村野)と高見(保坂尚希)は有罪を主張するが、熊本だけは無罪を確信していた。自白偏重の警察取り調べと状況証拠のみなのに“疑わしきは被告人の有利に”という裁判の原則をも無視した杜撰な裁判。しかも公判開始後1年経ってから新たに血痕の付いた衣類という証拠の提出により決定的となってしまった。そして全員一致の原則をも破り、多数決により有罪判決を述べなければならなくなった熊本・・・
反対しているのに死刑判決文を書かねばならない熊本。自らが死刑を宣告したような扱いとなり、自責の念にとらわれ、辞職する。味噌樽の底に1年漬かっていた衣類がどう変化するか、小刀で30数箇所刺すと刃がどうなるか、逃走時の閂・・・自ら無罪を証明するかのように奮闘する姿は感動的だ。「人を裁くということは、同時に自分も人に裁かれている」と裁判官の苦悩を学生に教え、自らは殺人犯と同じ心境になる。
ネットで調べると、この裁判と熊本については全て事実のようだ。司法試験を主席で突破するほどの優秀な人間がここまで捨て身になれるのか。単なる美談では済ますことができない男の生き様を感じるのだ。
惜しいのは、もっと熊本中心の映画にしてもよいのではないか?ということ。それでも満点つけましたが。
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